Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第119巻第5号

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資料
精神科救急入院料病棟に入院した統合失調症圏の服薬アドヒアランスによる治療転帰の差異―救急入院患者レジストリを用いて―
長谷川 花1), 野田 寿恵1), 杉山 直也1), 福田 祐典2)
1)財団法人復康会沼津中央病院
2)厚生労働省
精神神経学雑誌 119: 303-312, 2017
受理日:2017年1月18日

 統合失調症における服薬アドヒアランスの影響を明らかにするため,救急入院患者レジストリを用いて急性期入院患者における服薬規則群と不規則群における臨床的特徴や治療アウトカムの差異を解析した.両群ともに入院時の主病像は幻覚妄想状態が最頻であったが,不規則群は措置入院が有意に多く,より重症で,長期の入院を要した.一方,規則群は軽症傾向にあったが,背景として維持期の患者が多く,罹病期間,通算入院期間,入院回数とも不規則群を上回り,再入院までの期間も短かった.理由として不規則群の入院ニーズが治療中断再発への対応が主であるのに対して,規則群は治療アドヒアランスが保たれる中での入院であるため,変調が察知されやすく,適時に介入がなされたためと推察された.本結果は入院患者のみの比較であり,服薬アドヒアランス不良が再入院リスクを高めるという一般的な見識に矛盾しないと考えられた.入院エピソードには多様性があり,服薬状況などによって異なる特徴を示すことから,治療にあたっては服薬状況ごとの臨床特徴に見合った方針立案が重要と考えられた.

索引用語:統合失調症, 服薬アドヒアランス, 再入院, レジストリ, 精神科救急>
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