Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第119巻第4号

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特集 DSM-5 時代のアルコール依存の診断と治療のゴール―断酒か飲酒量低減か―
DSM-5時代のアルコール依存の生物学的基盤と薬物療法
松下 幸生1), 木村 充1), 吉村 淳2), 樋口 進1)
1)国立病院機構久里浜医療センター
2)東北医科薬科大学精神科学教室
精神神経学雑誌 119: 252-259, 2017

 アルコール依存症の生物学的基盤として遺伝因子を中心に解説し,家族研究,養子研究,双生児研究結果を紹介した.また,近年注目される遺伝環境相互作用に関する国内の例として非活性型ALDH2を有するアルコール依存症の割合の変化を示した.ALDH2はアルコールが酸化されて生じるアセトアルデヒドの代謝酵素だが,東洋人には酵素活性が減弱ないし失われる遺伝子多型が存在する.非活性型ALDH2を有する者は少量の飲酒で顔面紅潮などのフラッシング反応を起こすため,多量飲酒やアルコール依存症の予防因子と考えられている.しかし,アルコール依存症において非活性型ALDH2遺伝子を有する者の割合を1970年代から調べると,近年になるにつれてその割合が高くなっており,わが国の社会が以前と比べると依存症を作りやすい環境になっていることが示唆されている.また,依存症の薬物療法としてアカンプロサートについて解説して久里浜医療センターでの予後調査の予備的結果を紹介した.解析途中の段階だが,うつ病を合併した依存症ではより効果の得られることが示唆されている.精神疾患が時代の影響を受けることは他の疾患でも観察されているが,アルコール依存症も例外ではない.今後もさまざまな観点からモニターしながら最適な治療法の模索を継続する必要がある.

索引用語:アルコール使用障害, 遺伝, 遺伝環境相互作用, アルコール代謝, アカンプロサート>
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