Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第119巻第3号

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特集 精神医療・精神医学に関するガイドラインの現状と問題点
わが国における精神医療・精神医学ガイドラインの現状
田村 法子1)2)3)
1)日本精神神経学会精神医療・精神医学情報センター
2)慶應義塾大学医学部医学教育統轄センター
3)慶應義塾大学病院緩和ケアセンター
精神神経学雑誌 119: 151-157, 2017

 診療ガイドラインは,わが国においては「診療上の重要度の高い医療行為について,エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価,益と害のバランスなどを考量して,患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」と定義されている.適切に利用すれば,現場での臨床判断が円滑・効率化,社会的にみれば臨床行為のばらつきの改善,患者アウトカム,医療の質を向上させるといわれている.診療ガイドライン策定後は普及,評価,改訂というステップが重要であるが,わが国において普及,評価に関する情報は少ない.そのため,現状把握の一歩として,現在刊行されている診療ガイドラインの情報収集を行った.検索データベースには,Mindsウェブサイト,東邦大学・医中誌診療ガイドライン情報データベース,J-GLOBALを用いた.3つのデータベースで該当した合計数1,117件から重複や海外版などを除外すると,78件が該当した.78件の疾患,作成者/団体,発行年,作成方法,発行形態,改訂の有無について調査分類した.調査結果から,ガイドラインが多数存在すること,必ずしも入手が容易でないこと,使用されているのか(普及,実施しているのか)不明なことが浮かびあがった.また,診療ガイドラインが作成される際に用いられるエビデンスにはシンプルな症例を対象とした臨床研究が多いが,実臨床では複雑な症例が多いこと,現代では,いくつかの慢性疾患各々が病態生理的に関連するしないにかかわらず並存している状態であるマルチモビディティの問題があり,診療ガイドラインの実施が難しい面もある.しかし,精神医療・精神医学においては普及や実施に関する報告は少なく,円滑な医学情報の発信と医療の質向上に向けて今後の検討が待たれる.

索引用語:診療ガイドライン, 精神医療, 現状調査>
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