Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第119巻第12号

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特集 さまざまな精神障害の「病識」をどのように治療に生かすか
統合失調症の「病識」をどのように治療に生かすか
池淵 恵美
帝京大学医学部精神神経科学講座
精神神経学雑誌 119: 918-925, 2017

 統合失調症の病識の障害は疾患の本態とかかわるが,心理的機制や知識不足,精神医療への否定的な印象なども影響し,「心の病」を認識する困難さやスティグマの問題はさまざまな精神障害と共通している.統合失調症の病識欠如はよく観察され,脳機能の側面から研究されているが,近年はメタ認知の障害として理解されることが多い.これまでの効果研究では,急性期の薬物療法により全般的な症状の改善に伴って病識の改善がある程度期待できるが,慢性的な病識欠如への特異的な治療法はまだ十分効果を上げていない.そこで自験例に沿って障害認識や病識を育む取り組みを,急性期,その後の回復期,生活障害への認識などに沿って紹介した.本人の視点に立って混乱や挫折を眺めてみることや,体験症状を共有できない孤立感への共感,人生を取り戻そうとする本人なりの試みを理解し,一緒に生活を再建していく立ち位置が重要である.当初から「一生薬を飲む必要がある」などの悲観的な予後を伝えることは有害である.ネガティブな色合いの強い病名であればだれでも引き受けたいと思わないだろう.病識問題を考えるとき,社会のなかで精神障害をどう受け止めていくか,そして支援者がどう向き合っていくかということが大切である.

索引用語:統合失調症, 病識, 障害認識, 心理社会的治療, メタ認知>
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