現在わが国の精神科医の間で優勢な精神医学用語では,陰性症状とはスキゾフレニアの経過中の後期に出現するものと考えられており,一種の後遺症状であると見なされているようである.この考え方はDSM-III以降の精神医学界で優勢となったもので,それ以前のわが国や欧米で主流となっていたものとはほぼ逆転している.この見解に異議を唱えた本学会での議論の代表的なものとしては諏訪望の講演・論文があり,議論の出発点としてはこれが適当であろうと思われるので,その要旨を紹介することから始めたい.ついで,現在主流となっている考え方についてのプラスとマイナスを論じ,さらに今後発展しそうな脳科学からの情報をも視野に入れてこの概念の再検討を求める.
第112回日本精神神経学会学術総会
統合失調症の陰性症状について
千葉県精神科医療センター/公徳会佐藤病院
精神神経学雑誌
119:
791-797, 2017
<索引用語:スキゾフレニア, 陰性症状, DSM-III以降の症状記載, 知覚の変容, 運動の困難>