Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第119巻第10号

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教育講演
第112回日本精神神経学会学術総会
わが国におけるアルコール依存症の診断・治療の変遷
齋藤 利和
特定医療法人北仁会幹メンタルクリニック
精神神経学雑誌 119: 784-790, 2017

 アルコール依存症候群(WHO,1977)で示された精神依存重視の立場はその後相次いで出された米国精神医学会(DSM-III,DSM-III-R,DSM-IV)および世界保健機関の診断基準「精神および行動の障害-臨床記述と診断ガイドライン」(ICD-10)に引き継がれる.これらの診断基準では精神依存が認められないものは依存の診断がつけられない.わが国ではアルコール依存症の診断・治療ギャップが認められ,実際のアルコール依存症者の10分の1以下の者にしか診断がつけられておらず,治療もされていない.DSM-5では乱用,依存の概念が統一されたアルコール使用障害診断基準が提示されたが,概念が依存よりも拡大していること,診断項目が11項目に増加し,診断に必要な診断数は2項目に減少していることから,診断閾値が大幅に低下している.こうした診断上の問題,変化に伴い断酒だけではなく,飲酒量低減も治療目標となっている.集団精神療法,認知行動療法などが治療として行われてきたが,最近では症例の軽症化に伴い簡易介入が有効となっている.アルコール依存症者は精神疾患の併存症,特にうつ病,不安障害の併存が多い.アルコール依存ばかりではなくそれ以下のレベルのアルコール問題を併存した精神科併存症の予後は悪い.

索引用語:アルコール症, アルコール依存症, アルコール使用障害, 診断基準, アルコール依存症の治療>
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