Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第119巻第10号

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特集 女性医師がよりよく活躍するには―現状の分析と課題―
「ガラスの天井」その多義性と止揚,打開策
榎戸 芙佐子
医療法人社団和敬会谷野呉山病院
精神神経学雑誌 119: 759-765, 2017

 ジェンダー・ギャップ指数(GGI)は男女格差を測る国際的指標として使われ,日本は,0.670と145ヵ国中101位(2015年)と低い順位にある.この主な要因は,指導的地位にある女性が少ないということにある.実力のある女性が組織内で昇進できない障壁を「ガラスの天井」と比喩表現し,この言葉が生まれた背景には,1980年代に始まった産業構造の変化による多様性の重視と,それに伴い必然的に生じた幅広い職域への女性の進出があった.しかし,いまだ女性が活躍できていないのは,固定観念(できる女は嫌われる,謙虚・献身・内助の功)や,家事,育児,介護を一人で担わなくてはならない現実,妊娠・出産を機に離職せざるをえず,マミートラックしか走らせてもらえないという現実があることを指摘しなければならない.これは高度な専門技能を要する医療職にとって重大な損失である.もし,産休・育休時に施設基準の緩和や加配のシステムがあれば,休む方も雇う方も安心であり,責任・使命を全うする働きができるのではないか.そしてそれは,男女を問わずワーク・ライフ・バランスを長期的視野で捉えることを可能にするだろう.Sheryl Sandbergは「Lean In」を著し,女性たち自らがリーダーとなって会議のテーブルにつくよう鼓舞し,それを社会が支援する仕組みを作るように提唱している.精神科診療は社会と関連が深い領域である.それゆえに,パターナリズムを排し多様性と柔軟性の維持に,個人としても組織としても努めなければならないだろう.

索引用語:ジェンダー・ギャップ指数(GGI), ガラスの天井, 多様性, 固定観念, Lean In>
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