Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第119巻第1号

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特集 児童期の性同一性障害への対応について
児童精神科臨床における子どもの性別違和について
館農 勝1)2), 池田 官司2)3)4)
1)ときわ病院・ときわこども発達センター
2)札幌医科大学附属病院神経精神科
3)札幌医科大学附属病院GIDクリニック
4)北海道文教大学
精神神経学雑誌 119: 26-34, 2017

 DSM-5において性別違和は,「その人が体験し,または表出するジェンダーと指定されたジェンダーとの間の著しい不一致が(中略)示される」と定義されている.子どもの性別違和感に関する訴えは多彩であるが,言語発達が十分ではない低年齢では,その違和感や不快感をうまく表現できない可能性もある.子どもの性別違和は,青年および成人の性別違和とは異なり思春期に至り症状が軽快することが多い.よって,同一症例の経過中においても性別違和感についての訴えは大きく変化するため診断には慎重な姿勢が求められる.性同一性の障害は,著しいアイデンティティの障害であり多大なる苦痛を与える.さらには,ジェンダーの悩みに加え,偏見に基づくいじめ,友達関係や家庭内における孤立感,身体を中心に自己への強い嫌悪感,それに伴う自己肯定感の低下や自己否定,将来への悲観や絶望など,子どもたちに二重,三重の心理的苦悩を与え,その結果,精神障害を併存する場合もある.よって,性同一性に関連した悩みを有する子どもたちに対するケアは児童精神科臨床における重要な課題である.平成27年に文部科学省は「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」として,性別違和を含むセクシュアル・マイノリティとされる児童・生徒への学校での配慮を促した.さらには,具体的対応法を記載した教職員向けマニュアルを発行し学校での適切な対応を徹底している.性別違和は,しばしば併存症を伴うが,自閉スペクトラム症(ASD)を伴う症例も比較的多い.近年,海外を中心にASDを併存した症例の報告がいくつも存在する.また,性別違和とASDの関連性を論じた総説も少なくない.性別違和にみられるASD特性,ASDにおける性別違和に関連した訴えなど,両診断の併存は臨床場面においても関心を集めている.本稿では,子どもの性別違和の臨床症状と診断,性別違和とASDとの関連,ASDでみられるジェンダーに関連した訴え,子どもの性別違和と診断した子の小学校入学に際しての支援などについて述べる.

索引用語:性別違和, 性同一性障害, セクシュアル・マイノリティ, 自閉スペクトラム症, 発達障害>
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