Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第119巻第1号

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特集 児童期の性同一性障害への対応について
性同一性障害,および性に関連する悩みを有する子どもの診療について―児童精神科医および心理士へのアンケート結果から―
上野 千穂1), 館農 勝2), 中山 浩3)
1)京都市児童福祉センター診療所
2)特定医療法人さっぽろ悠心の郷ときわ病院
3)川崎市こども家庭センター
精神神経学雑誌 119: 17-25, 2017

 文部科学省は平成22年に,「児童生徒が抱える問題に対しての教育相談の徹底について」を発出し,平成27年には,性同一性障害(GID)だけでなくセクシュアルマイノリティの生徒への対応が必要と認め,「医療機関と連携し支援を進めることが重要である」とも明記している.しかし,児童思春期の医療現場において全国的な調査はなく,実際にどのような臨床が行われているか把握されていないのが現状である.そこで,われわれは児童青年期におけるGIDの実態を調査して現状把握を行うことを目的とし,児童青年精神医学会の認定医,代議員(計315人)に対してアンケート調査を行った.質問内容は,GIDや性の悩みをもつ児童の相談・診察件数,内容,対応に加え,臨床での困りごとや意見などの自由記述を含むものである.回答者数は127名,回収率は40.3%で,臨床経験年数の平均は24.2±10年,児童精神科経験年数の平均は16.9±11.5年であった.GID相談の経験は88名(68.8%),性の悩み相談(異性装,性別の違和感など)の経験は105名(81.9%)で,相談者は本人,保護者,学校関係者の順に多かった.GIDの診察経験は74名(57.5%)で,患児の性別は,就学前では男子(出生時性別)が圧倒的に多く,小学校高学年で人数の性差はなく,中学生以上では女子が多かった.性の悩みに関する診察経験は87名(67.7%)で,性差は小学校中学年までは男子が多く,高学年,中学生は女子が多いものの高校生では男子が多かった.自由記述では診断,鑑別診断,対応,治療経過,他機関との連携などについて多くの意見がみられた.現時点ではGIDと性の悩みに対する臨床支援において,児童精神科医の中でも考え方がさまざまである.そのため今後児童思春期におけるGIDおよび性の悩みの現状に即した支援方法を多角的な視点から検討し,確立する必要がある.

索引用語:性同一性障害, 性別違和, セクシュアルマイノリティ, 児童思春期, 児童精神科医>
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