Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第9号

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特集 高度急性期精神科医療の将来像
精神科高度医療のモデル開発・提供・教育―大学病院精神科の役割―
笠井 清登1), 金原 明子1), 里村 嘉弘1), 管 心2), 谷口 豪1), 市橋 香代1), 金生 由紀子3), 近藤 伸介1)
1)東京大学医学部附属病院精神神経科
2)東京大学医学部附属病院リハビリテーション部
3)東京大学医学部附属病院こころの発達診療部
精神神経学雑誌 118: 701-706, 2016

 大学病院精神科の役割は,①大学病院ならではの精神科高度医療の開発と提供,②総合病院精神科ならではの身体疾患患者に対する精神科的介入のモデル提供,③こうしたモデル事業の理念や実践を若手精神科医が学ぶ場となることである.ここで大学病院の役割をいわゆる「急性期」に限定しなかったのは,急性期から社会復帰までを一貫して支援する人生支援が真の意味での高度医療であり,そうした精神科医療の理念こそ大学病院精神科が若手精神科医に教育すべきだからである.①としては,当院では近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いて,精神疾患の補助診断や治療法選択などに役立つバイオマーカーの開発を行い,それを活用した検査入院プログラムを提供している.てんかんと心因性非てんかん性発作(PNES)の鑑別のためのEpilepsy Monitoring Unit(EMU)など,いわゆる神経精神医学分野においても大学病院精神科の果たす役割は大きい.また,精神疾患患者に対する心理社会的支援や就労支援法の開発,発達障害の診断・評価のための検査入院プログラムの実施なども行っている.②としては,当院は精神科リエゾンチームを有し,全科のせん妄,不安抑うつなどへのコンサルテーションのほか,各種移植医療などにも積極的にコミットしている.救命救急センターと精神科の連携体制も強力である.身体疾患の入院・救急患者で精神科的対応を要する患者は全体の数割にも及び,精神科がなければ多くの重症身体疾患患者を診ることができないので,大学病院および総合病院の精神科に対する診療報酬上の適正な評価がなされるべきである.1)各大学病院精神科がそれぞれの専門性や得意分野を生かしてモデル事業を開発し提供する,2)それらのグッドプラクティスの情報を集約したうえで,多施設共同研究やDPCデータなどによりエビデンスを確立する,3)先進医療・保険適用へと進める,4)継続的な質の改善を行う,というサイクルをマネジメントする「精神科高度医療開発マネジメントセンター」(仮称)の設立を提案したい.③としては,こうしたモデル事業の理念や実践を若手精神科医が学ぶことでこれらが社会に広がっていき,未来の精神科医療を変えることになるという,教育の場としての大学病院の役割を強調した.

索引用語:補助診断バイオマーカー, 心理社会的支援法, 神経精神医学, リエゾン, DPCデータ利用>
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