Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第8号

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原著
総合病院精神科入院患者における院内肺炎の検討―特徴と重症化因子についての予備的研究―
岡田 剛史1), 塩田 勝利1), 小林 聡幸1), 西多 昌規1), 須田 史朗1), 加藤 敏1)2)
1)自治医科大学附属病院精神科
2)小山富士見台病院
精神神経学雑誌 118: 570-583, 2016
受理日:2016年3月4日

 【目的】肺炎は精神科入院における主要な身体合併症の1つである.しかし,その特徴や特有の重症化因子についての指摘は少ない.今回,精神科入院における院内肺炎と身体科における院内肺炎が同様であるかと,肺炎の精神科特有の重症化因子について検討した.【方法】過去7年間に自治医科大学精神科病棟内で発生した肺炎22例(平均63.3歳,男性9例,女性13例)に対して,後方視的にその特徴や喀痰培養の結果の検討を行った.重症度判定にはPSIを用いて,クラスI~IIIを軽症群(n=15),クラスIV以上を中等症以上群(n=7)と判定し,PSI判定項目以外の因子(BMI,精神科治療年数および入院回数,GAFスコア,抗精神病薬量(chlorpromazine換算),benzodiazepine(Bz)系薬剤量(diazepam換算),抗パーキンソン薬量(trihexyphenidyl biperiden換算)について比較を行った.【結果】発症に先行して誤嚥のエピソードを認めたのは1例のみで,死亡例はなく,1例だけ人工呼吸器管理を要した.喀痰培養は18例で実施されており,起因菌としては肺炎球菌が5例で最多であり,4例で黄色ブドウ球菌を認めたが,MRSAや緑膿菌は認めなかった.中等症以上群では有意にBMIは低く(18.3±2.6 vs 21.2±3.5),入院回数は多く(3.4±3.3回 vs 1.1±1.4回),GAFスコア30以下は多かった(85.7% vs 33.3%).また中等症以上群で有意にBz系薬剤使用量および抗パーキンソン薬使用量は多かった〔Bz(2.3±2.4 mg vs 0.4±1.1 mg;BP(2.3±2.4 mg vs 0.4±1.1 mg)〕.【考察】総合病院精神科病棟内の院内肺炎は細菌学的所見やその良好な予後,明らかな誤嚥性肺炎が少ないなど身体科の院内肺炎とは異なり市中肺炎に近い特徴がみられた.低BMI,入院回数が多い,GAFスコア30以下の精神状態コントロール不良な例や,Bz系薬剤および抗パーキンソン薬の使用量が精神科院内肺炎重症化に関与することが示唆された.

索引用語:院内肺炎, 市中肺炎, 向精神薬, Pneumonia Severity Index>
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