Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第6号

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特集 アルツハイマー病におけるSymptomatic Drugsの使い方と使い分け
BPSDに対する抗認知症薬の使い方
橋本 衛
熊本大学大学院生命科学研究部神経精神医学分野
精神神経学雑誌 118: 436-442, 2016

 抗認知症薬が4剤に増え本邦の認知症医療もようやく世界水準となったが,選択肢が増えたことにより臨床医には,個々の患者にとって最良の薬剤選択を行うことが求められるようになった.抗認知症薬の主たる効用は中核症状の改善と進行の遅延であるが,最近の研究により認知症の精神症状・行動障害(BPSD)に対しても一定の効果を認めることが示されている.その一方で抗認知症薬によりBPSDが悪化する場合もあるため,抗認知症薬を使用する際には必ずBPSDへの影響も考慮しなければならない.抗認知症薬をBPSDに対して使用する際には,①疾患はアルツハイマー病(AD)かレビー小体型認知症(DLB)か,②コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬のどちらを使用すべきか,③治療対象となるBPSDの種類は何か,の3点を考慮し薬剤選択を行う.具体的には,背景疾患がDLBの場合は,幻覚妄想への効果を期待し積極的にコリンエステラーゼ阻害薬を使用する.一方ADで興奮や幻覚妄想が活発な場合は,NMDA受容体拮抗薬を優先的に用いる.アパシーなどの陰性症状に対しては,コリンエステラーゼ阻害薬を選択する.BPSDの成因は,①「患者本人の思考,感覚と周囲環境との間に生じたずれを,患者なりに解決しようとした結果BPSDが引き起こされる」と考える心理社会的要因と,②「脳病変に直接起因する」と考える生物学的要因に大別される.すべてのBPSDにはこれら2つの要因がそれぞれ比重を変えながら関与しているため,BPSD治療には両方の要因に同時に目を向ける必要がある.前者に対しては介護者教育などの非薬物的介入が,後者には薬物治療がより有効であり,BPSDのトータルケアとは,心理社会的要因と生物学的要因の両方にアプローチすることである.

索引用語:アルツハイマー病, レビー小体型認知症, 抗認知症薬, BPSD>
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