Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第6号

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特集 発達障害治療のトピックス
自閉スペクトラム症におけるオキシトシン
棟居 俊夫1), 三邉 義雄1)2)
1)金沢大学子どものこころの発達研究センター
2)金沢大学附属病院神経科精神科
精神神経学雑誌 118: 399-409, 2016

 自閉スペクトラム症(ASD)の中核症状は,相互的コミュニケーションあるいは相互的対人交流の成立のしがたさ(対人交流症状)と限定的で繰り返される関心や活動である.これらの中核症状に対する有効性の確立された治療法は存在しない.進化的に高度に保存されたオキシトシンは,数多くの動物研究から個体と個体の関係性にかかわるペプチドとみなされ,ASDの治療薬としての可能性が,近年,関心を集めている.本稿において,ASDにかかわるオキシトシン研究,特にASDの中核症状に対するオキシトシンによる無作為化比較試験(RCT)について概説することを試みた.単回投与によるRCTは,対象者が定型発達者であってもASD者であっても,オキシトシンに優位な結果を得た研究が数多く存在する.他方,ASD者を対象とした継続投与によるRCTは,20以上が登録され,うち6つが公表されている(1つは忍容性の報告).オキシトシンに優位な結果を得た研究が3つある.今後なされる報告を併せて,投与量,投与期間,対象者選択などに関する課題,特に対人交流症状をどのように評価するかという最大の課題が解決される可能性がある.さらにDSMの第4版から第5版までの2回の改訂のたびに,ASDの範囲が狭くなっていることはRCTの結果の解釈の際に留意すべき事柄である.

索引用語:自閉スペクトラム症, オキシトシン, 無作為化比較試験>
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