児童期の注意欠如・多動症(ADHD)の診断・治療ガイドラインが,わが国で初めて公表されたのは2003年である.その後,徐放性methylphenidateおよびatomoxetineが順に児童期から成人期にまでその使用が承認されるなど,ADHDの治療に関する状況は刻々と変化している.そして,成人期までADHDの症状が持続すること,有病率の高さや,併存疾患の問題などから成人期におけるADHDへの需要が高まっている.さらにDSM-5になりADHDと自閉スペクトラム症(ASD)の併存が認められるようになり,より一層関心がもたれるようになっているが,現時点ではADHD症状を伴うASDの治療ガイドラインは確立されていないため,早急に標準的治療指針が求められている.そのため本稿では,現段階でのADHD症状を伴うASDへの薬物療法を近年の知見を踏まえて概説する.
ADHD症状を伴う自閉スペクトラム症に対する薬物療法
奈良県立医科大学精神医学講座
精神神経学雑誌
118:
391-398, 2016
<索引用語:注意欠如・多動症, 自閉スペクトラム症, 抗ADHD薬, 光トポグラフィー検査>