日本精神神経学会は専門医のあり方について長く議論をしてきた.紆余曲折を経て,1994年に学会認定制に関するいわゆる「山内答申」が出されたが,専門医の認定が始まったのは2006年で,現在の専門医制度は間もなく運用10年になろうとしている.近年,専門医制度を取り巻く状況に大きな変化が起きている.厚生労働省が「専門医の在り方に関する検討会」を設置し,2013年4月に報告書が示され,これに基づき2014年5月に中立的な第三者機構として一般社団法人日本専門医機構が発足した.そして,専門医の研修および認定について新たな制度が作られ,2017年度から新しい専門医制度が開始されることになった.このような状況の中で,精神科専門医にはどのような資質が求められるのだろうか.そしてその資質を得るためにどのような専門研修が必要なのだろうか.これらについて考えるために大学医学部における医教育の変革,「専門医の在り方に関する検討会」や「日本専門医機構」が示唆している専門医,そして日本精神神経学会がこれまで考えてきた,そして今,考えている専門医のあり方について考察した.精神科専門医に求められる理念・使命そしてアウトカムは基本的に大きく変わることはないが,目標達成のための方法論は医学教育のグローバル化とともに大きな変貌を遂げている.
精神科専門医研修で研修すべきこと
医療法人社団ハートフル川崎病院精神科
精神神経学雑誌
118:
326-332, 2016
<索引用語:精神科専門医制度, コンピテンス, アウトカム, カリキュラム, プログラム>