Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第4号

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特集 本学会の「沖縄精神科医療委員会」活動の検証―50年が経過して―
半世紀前の沖縄における精神科医療状況と派遣医制度
目黒 克己1)2)
1)医療法人高仁会顧問
2)元厚生省精神衛生課長
精神神経学雑誌 118: 220-226, 2016

 1966年に行われた沖縄の精神衛生実態調査(以下,沖縄調査)に専門調査員として参加して得た知見と厚生省の沖縄の医療援助の担当者としての経験を基にして半世紀前の沖縄における精神科医療状況と派遣医師制度を述べた.沖縄調査は,本土の精神衛生実態調査と同じ統計学的にも高い水準の方法で行われたものであり,精神障害者と精神科医療の状況を明らかにすると同時に,その後の沖縄の精神科医療に大きな影響を与えた.さらに1972年の本土復帰により沖縄の精神科医療は大きく変化した.沖縄調査では精神障害者の人口千対有病率は25.7であり精神障害者数は推計24,060人であった.このうち,精神科医療も指導も受けていない者は約17,000人(71%)であった.1966年の沖縄における精神科病院は5施設,診療所は1施設,精神病床数は915床である.本土復帰前に施行されていた琉球精神衛生法の特徴は,精神病者の私宅監置と精神科医療費の公費負担である.本土復帰後,私宅監置は廃止され,精神科医療費の公費負担は継続された.沖縄精神衛生協会は沖縄の精神科医療と精神衛生活動に大きく貢献した.保健所の精神衛生担当職員と公衆衛生看護婦による精神衛生活動が沖縄調査を契機に行われるようになった.派遣医制度は沖縄医療援助の一環として行われており,精神科医療については,国立下総療養所などから精神科の専門医師を派遣していた.1966年と比較すると現在の沖縄精神病床など量的な精神科医療の状況は大きく改善されている.今後の沖縄の精神科医療には包括的な精神障害者の社会復帰体制とストレスケア対策の充実を期待する.

索引用語:沖縄, 精神科, 医療, 歴史>
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