Advertisement第116回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第4号

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総説
英国出生コホート研究の歴史と現状,日本での実施可能性
小池 進介1)2), Noriko Cable3), Marcus Richards1)
1)Medical Research Council Unit for Lifelong Health and Ageing at University College London
2)東京大学学生相談ネットワーク本部精神保健支援室
3)Department of Epidemiology and Public Health, University College London
精神神経学雑誌 118: 185-198, 2016
受理日:2015年5月13日

 出生コホート研究は,ある共通因子をもつ集団を対象として,出生前後より前向きに追跡することによって,さまざまな転帰の因果関係を検討する前向き研究である.英国は伝統的に全国出生コホート研究が10数年おきに実施され,数多くの研究結果と,それに基づいた政策提言がなされている.英国出生コホート研究は,必ずしも国家事業として,長期間の研究を想定して実施されたものではなく,研究成果や調査の進捗状況から研究の延長,研究目的の変更などが認められ,現在まで続いているものがほとんどである.こうした厳しい競争に生き残った出生コホート研究が1990年代より再評価されるようになり,国家資産として国内外の研究者に広く利用されている.精神医学やメンタルヘルスにおける研究では,当初は統合失調症など精神疾患の発病リスク因子を検討した研究が多かった.現在では,精神疾患と身体疾患の関係,バイオサンプルを用いた生物学的な検討など,より多面的な研究が実施されている.また,小児期・思春期の認知機能低下と精神病症状体験との関係が,統合失調症の認知機能低下の特徴と近いといった,疾患スペクトラムを意識した検討も行われている.日本でも政策に反映しやすい,国家資産としての出生コホート研究の実施が望まれるが,長期間継続した大規模出生コホートが存在せず,出生コホートを立ち上げ,高い継続率で持続させ,研究成果を社会に還元する仕組みやノウハウがない.日本ではノウハウを学びながら,日本の状況に合わせて独自に発展させていく必要がある.特に,周産期,学校,職場,医療,行政などで,諸外国で実施されている研究調査と遜色ない健診や調査が日常的・継続的に実施されている.今後,これらの健診結果や調査結果を連結する,研究分野からの提案を取り入れるなど,研究面との融合が望まれる.現在,これを実現する法制度がなく,関連法の整備が必要である.

索引用語:コホート, バイオバンク>
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