出生コホート研究は,ある共通因子をもつ集団を対象として,出生前後より前向きに追跡することによって,さまざまな転帰の因果関係を検討する前向き研究である.英国は伝統的に全国出生コホート研究が10数年おきに実施され,数多くの研究結果と,それに基づいた政策提言がなされている.英国出生コホート研究は,必ずしも国家事業として,長期間の研究を想定して実施されたものではなく,研究成果や調査の進捗状況から研究の延長,研究目的の変更などが認められ,現在まで続いているものがほとんどである.こうした厳しい競争に生き残った出生コホート研究が1990年代より再評価されるようになり,国家資産として国内外の研究者に広く利用されている.精神医学やメンタルヘルスにおける研究では,当初は統合失調症など精神疾患の発病リスク因子を検討した研究が多かった.現在では,精神疾患と身体疾患の関係,バイオサンプルを用いた生物学的な検討など,より多面的な研究が実施されている.また,小児期・思春期の認知機能低下と精神病症状体験との関係が,統合失調症の認知機能低下の特徴と近いといった,疾患スペクトラムを意識した検討も行われている.日本でも政策に反映しやすい,国家資産としての出生コホート研究の実施が望まれるが,長期間継続した大規模出生コホートが存在せず,出生コホートを立ち上げ,高い継続率で持続させ,研究成果を社会に還元する仕組みやノウハウがない.日本ではノウハウを学びながら,日本の状況に合わせて独自に発展させていく必要がある.特に,周産期,学校,職場,医療,行政などで,諸外国で実施されている研究調査と遜色ない健診や調査が日常的・継続的に実施されている.今後,これらの健診結果や調査結果を連結する,研究分野からの提案を取り入れるなど,研究面との融合が望まれる.現在,これを実現する法制度がなく,関連法の整備が必要である.
2)東京大学学生相談ネットワーク本部精神保健支援室
3)Department of Epidemiology and Public Health, University College London
受理日:2015年5月13日
はじめに
コホート研究とは,ある共通因子をもつ集団を対象として,前向きに追跡することによって,さまざまな転帰の因果関係を検討する前向き研究である.出生コホート研究とは,そのうち出生前後より追跡を開始するものをいう.英国は伝統的に全国出生コホート研究が10数年おきに立ち上げられ,継続的に実施されてきており,数多くの研究結果と,それに基づいた政策提言がなされている.日本においてもさまざまなコホート研究が実施されてきた,もしくは現在実施されているが,全国を対象とした大規模人数で,出生前後より長期に追跡された例はない.ここでは英国出生コホート研究の始まりと歴史的変遷,現状を紹介し,日本における応用可能性について検討する.
I.英国出生コホート研究の始まりと変遷
英国出生コホート研究は,必ずしも国家事業として,長期間の研究を想定して実施されたものではなかった.全国規模の英国大規模出生コホート研究は現在4例あるが,初期の研究目的は出生後数年の転帰に限っており,研究成果や調査の進捗状況により,研究の延長,研究目的の変更などが認められ,現在まで続いているものがほとんどである.コホート研究は1回の調査に莫大な費用がかかり,研究成果や調査の進展が十分でないと新たな研究費が採択されず,研究中断・終了となる.実際,英国政府の政策により1980年代はコホート研究は大規模な縮小を余儀なくされた.しかし,1990年代よりその成果が再評価され,遺伝子などバイオサンプルの一部はバイオバンクとしても利用されるようになり,現在に至る.
歴史的にみると,英国では1980年代を除いておよそ10数年おきに1つの全国大規模出生コホート研究が実施されているようにみえる.しかし,実際は参加者の協力と研究者の努力などにより,10年以上継続できた出生コホート研究が現在も続けられているということである.表1に,現在運営されている英国の主要な出生コホート研究をまとめた23).
1.MRC National Survey of Health and Development Cohort(NSHD)
NSHDは,1946年3月の1週間にイングランド,ウェールズ,もしくはスコットランドで出生した16,695名を対象に実施された33).当初の目的は,第二次世界大戦後の混乱や食糧不足などが母子の健康にどう影響するかや,子どもをもつことによる経済的影響を検討するための調査であったが,研究成果が評価され,継続調査のための研究費が認められた.そのため,当時の社会階層分布に基づき,ランダムに抽出された単体摘出児5,362名について,その後も調査が実施された.研究成果と継続率の高さから,現在に至るまで研究が継続している.第21,22回調査(43,53歳)では,イギリス国勢調査データと比較して,性別,階級などの差異がほとんどみられなかった34).現在までに23回の調査が実施され,半数以上の約2,856人が協力した.2014年より24回目の調査が開始されており,継続してデータを取得している出生コホート研究では世界最長の研究である.
バイオサンプルについても取得を開始しており,1999年に血液サンプルが採取され,DNAが抽出された.DNAは遺伝子解析の国際コンソーシアムに参加することで,コホート研究ではゲノムワイド関連解析(GWAS)の結果を得ている.現在進行中の調査では,MRIおよびPETを用いた計測を予定している.
2.National Child Development Study (NCDS)
NCDSは,1958年3月のある1週間にイングランド,ウェールズ,もしくはスコットランドで出生した17,416名を対象に実施された26).当初の研究目的は,戦後の混乱期を抜けた後も死産率や乳幼児死亡率が低下しない原因を探るため,社会学的,周産期因子との関連を検討し,公衆衛生向上を図るためであった.NCDSは,この研究結果に基づいた政策への反映が,実際に周産期死亡率の低下という成果につながったため,参加者全員の調査の継続を延長する形で研究が継続した.NSHDと同様にNCDSでも,小児期の調査において,参加者の調査が両親,教師,医療者と多方面から得られている.また,16歳時点で,同じ出生日をもち,出生当時英国に居住していなかった移民も参加者に加えた.現在までに9回の調査が実施され,2003年調査(45歳)まで10,000名を超える参加者があり,現在でも半数以上の約9,000名が協力している.また,1991年(33歳)には,抽出サンプルを対象として家族の調査が実施され,親子間データが利用可能である.2003年に血液サンプルが採取され,NSHDと同様にGWASデータが利用できる.他の血液データについても,NSHD対象者が同年齢のときに取得したバイオサンプルと比較可能な形で採取している.
3.1970 British Cohort Study (BCS70/BCS)
BCSは,1970年4月の1週間にイングランド,ウェールズ,スコットランド,もしくは北アイルランド(5歳以降中止)で出生した17,287名を対象に実施された9).BCSは,当初British Birth Surveyに基づいており,上記2つの出生コホート研究の成果と反省を踏まえ,広範に8つの目的が設定された.現在までに9回の調査が実施され,半数以上の約9,000名が協力した.また,NCDSと同様に,移民サンプルも途中で加えられ,34歳調査で家族調査が実施された.BCSは立ち上げ時より,NCDSと直接比較できるように設定されており,情報提供者,調査の範囲,調査内容は共通のものが多い.また,NCDSと調査時期をずらし,電話連絡や面接調査を交互に行うことにより,質の担保や経費節減を図っている.2016年(46歳)の調査では,血液サンプルを含むバイオマーカーの収集が計画されている.
4.Millennium Cohort Study (MCS)
MCSは,2000年9月~2002年1月に英国全土で出生した19,519名とその家族を対象に実施された8).BCSより30年間,新規の全国出生コホートが実施されず,英国内で政策を決めるためのデータが不足したことが立ち上げの大きな動機となった.また,この30年間で学術的にも大きな進歩があり,通年で被験者をリクルートし,疾患の季節的影響が調査できるようになった.また,両親の健康,祖父母や友人,家庭内での家事の分担など,より多岐にわたった調査を実施している.参加者についても,社会保障を受けている家族や移民も当初から参加対象とし,オーバーサンプリングすることによって,幼少時の社会的因子が与える影響を効果的にみようとしている.そのため,参加者に対する白人の割合が82%に減少している.現在までに5回の調査が実施され,70%の約13,000名が協力した.3歳時に唾液サンプルが採取され,DNAが抽出され,コルチゾールが計測された.
5.Avon Longitudinal Study of Parents and Children (ALSPAC)
ALSPACは,1991年4月~1992年12月にイングランド西部のブリストルで妊娠した14,541名の女性とその子を対象に実施された11).当初の目的は,母子の健康と発達に関係する因子を妊娠期より追跡するヨーロッパ内の国際共同研究European Longitudinal Study of Pregnancy and Childhood(ELSPAC)の1サイトであったが,その成果とデータの稀少性が認められ,現在まで継続している.そのため,当初はヨーロッパからの資金で実施されていた.
ALSPACは,妊娠期より血液,尿,胎盤,臍帯血,毛髪など,さまざまなバイオサンプルが収集されており,先駆的なバイオバンクとなっている.また,ブリストルが英国の代表標本として適した都市であったことと,上述の30年間の空白期間を埋める出生コホートであったため,現在上記4つの全国出生コホートの間を埋める形でも貴重な存在である.現在は,対象児の妊娠と子にも焦点をあて,三世代バイオコホートとして他にはない特徴を増している4).
6.その他の英国出生コホート研究
その他の英国出生コホートについて紹介する.Hertfordshire cohort studyは,1911~1939年にイングランド東部のヘンフォード州で出生した子を対象にした調査で,担当病院に当時の周産期および発達記録が残っており,それと重ねる形で1980年代より始まったコホート研究である.Twin Early Development Studyは,1994~1996年にイングランドもしくはウェールズで出生した双生児を対象とした出生コホートで,双生児の特徴を活かした研究が行われている.また,高い追跡率であることも知られている.Southampton Women's Surveyは,1998~2002年にロンドン南部のサウザンプトンに在住の20~34歳の女性を対象にした調査で,1998~2007年に対象者から出生した子も対象にしているコホート研究である.Life Studyは,現在新規立ち上げ中の出生コホート研究で,2014~2018年にロンドン東部のBarking, Havering and Redbridge大学病院の医療圏で出生した子を対象としており,80,000名の参加を目標としている.
II.精神医学およびメンタルヘルスとの関連
出生コホートにおける精神疾患の研究は,前向き研究の特性を活かして死亡や発病リスク因子の同定を検討した研究が多かった.例えば,統合失調症やうつ病患者は,幼児期の発達遅延や認知機能の低さが発病前より認められることを見出した研究や16)32),思春期の抑うつ症状を40年間追跡した検討がある7).
また,出生コホートで得られた多方面の指標を活かして,心身の健康をみた研究が多い.抑うつ症状と肥満の関係が思春期から40年かけてどう変化するのか相互に検討した結果や13),出産後の父親の抑うつ症状が子の問題行動に影響を及ぼすことを示した結果がある27).
近年では,バイオサンプルを用いた生物学的な検討,認知機能低下の要因に関する検討,quality of lifeやウェルビーイングを対象にした検討など,多岐にわたる研究が実施されている.例えば,妊娠中のヨウ素欠乏により子の認知機能が低下する3),15歳時の認知機能が低いと43~53歳の認知機能がより大きく低下する30),抑うつ症状によって主観的な認知機能低下を引き起こすが53~63歳の認知機能低下とは関係がない29),母乳栄養によって子の心理社会的適応が高まり,それによって母のウェルビーイングが高まる5)などが挙げられる.
今後,コホート研究で検討すべき精神疾患研究として,統合失調症の認知機能を例にして説明する(表2).これまでのケースコントロール研究により,統合失調症の認知機能は健常対照者と比して,幅広い領域で低下していることがわかっている1).認知機能低下は初回エピソードの時点で認められ,その後は健常対照者と同様の変化を示し,その差は変化しないか,症状改善に伴って認知機能低下の程度もやや改善する1).近年のハイリスク研究により,統合失調症患者の同胞や,微弱な陽性症状をもつなどの精神病ハイリスク群では,初回エピソード統合失調症と健常対照者の中間の認知機能低下を示すことが知られており,特に言語性課題の成績低下はその後の発症や機能予後を予測するとされる12).これらは,脳波事象関連電位やMRIによる脳体積,fMRIや近赤外線スペクトロスコピィ(NIRS)を用いた脳機能においても示されており,言語機能に関係する下前頭前野の脳体積・機能は,精神病ハイリスク群においても低下している一方,精神病ハイリスク群・初回エピソード精神病群・慢性期統合失調症群の間では明らかな差がないことが示されている15)20)21)24).しかし,こうしたケースコントロール研究は,長くても数年の縦断研究にとどまり,幼少期からの発達過程を考慮には入れていない.また,ケース,コントロールどちらの群においても,サンプリングバイアスは無視できない.
一方で,統合失調症の出生コホート研究により,統合失調症患者は,幼少期から認知機能,運動機能などの幅広い発達過程に遅れがあることが知られている18)35).近年では,認知機能の各領域ごとに,どの時点で発達の遅れが認められ,成長とともに発達の遅れが広がるのかどうか,という検討がなされている.例えば,統合失調症の言語性認知機能については,小児期より成績低下を認め,その後は変化しないという報告28)と,思春期に成績低下が明らかになるという報告22)がある.今後も,ケースコントロール研究でとらえづらい,長期間の発達と精神疾患の発症,機能予後との関係を,コホート研究によって補完する必要がある.特に思春期の発達に注目した研究により,統合失調症の発症や,それに伴う認知機能障害の病態が解明できるかもしれない17).
また,自記式の質問票による精神病症状体験も注目されている.11歳時の強い精神病症状体験が,26歳時点での統合失調症や,その他の機能予後を予測することが示されている25).精神病症状体験をもつ被験者の認知機能低下も,ケースコントロール研究における精神病ハイリスク群の認知機能低下の特徴と似ることが示されている14)19).これらの結果により,統合失調症が他の精神疾患と同様に症候群であり,スペクトラムを考慮した研究が可能であることを示唆している.今後は,精神病症状体験と精神病ハイリスク群の合間を埋める研究が必要であろう.
III.英国出生コホート研究の現状
現在,英国は生涯の健康とウェルビーイングに関係する遺伝的,生物学的,社会的因子の調査を質量ともに充実させるため,大規模コホート研究を全面的に支援している23).現在,英国政府からの研究費で実施されている英国の大規模コホート研究は34にのぼり,年間約48億円(2,760万ポンド,175円/ポンドで算出)の研究費が支出されている.また,2014年には上記のLife Studyを含めて新規に2つのコホート研究の立ち上げが予定されている.34のコホートのうち,17は追跡期間が20年を超えている.また,これらのコホートの参加人数は約250万人であり,英国一般人口の3.5%にあたる.
1.コホート研究間の連携
これらのコホートデータは貴重な国家資産に位置づけられており,1つのコホート研究単体ですべての研究方針や取得データを決定することはもはや許されていない.あるコホート研究で得られた成果が,他のコホート研究でも再現されるのか,時代間の差があるのか,他の要因があるのかなど,さまざまな検討が戦略的に行われるよう整備されつつある(表3).そのため,コホート研究代表者同士によるディスカッションと複数コホート間での共同研究が推奨されている.代表的なものに,Cohort & Longitudinal Studies Enhancement Resources(CLOSER)やHealthy Ageing across the Life Course(HALCyon)がある.
2.外部データとの連携
コホート研究本体の調査に頼らず,さまざまなデータとリンクさせることを念頭においており,効率よくデータを収集でき,さらに政策に反映しやすい.また,今後の技術の発展を見越した研究計画とそれに対する投資もよく考えられている.例えば,死亡や犯罪などの行政データや入院歴などの医療データを用いて,アウトカムに関連したリスク因子の同定を行うことが可能である.
3.データの公表
NCDS,BCSおよびMCSについては,立ち上げ当初より英国政府主導の研究であったため,データについても英国の資産として,研究者に広く共有する仕組みがある.エセックス大学を拠点とするUK Data Archiveでは,コホート研究データのみならず,政府が助成した多くの調査データが比較的簡単に取得できる.所属する研究機関と研究者の登録とデータ使用目的の審査が済めばダウンロードは外国からでも可能である.すでに研究機関が登録済みであれば,研究者の審査と登録からダウンロードまで数日で可能である.
出生コホートデータについては,コホート研究で取得したほぼすべての質問項目のデータが,上記の申請で取得可能である.遺伝子データ,死亡や犯罪歴などの行政データ,入院歴などの医療データについては,別途申請と審査が必要である.現在上記3つのコホートを統括しているCentre for Longitudinal Studiesでは,使用した質問票,取得指標項目,データの申請方法をホームページ上に公開しており,申請に必要な手続きなどのわかりやすい解説が記載してある.また,他のコホート研究についても,各ホームページ上にデータ申請方法が記載してあり,それぞれの研究機関で定められた審査を経て,データが使用可能となる.
これらのデータを用いた研究成果が公表された場合,出生コホートのデータを収集する研究機関はデータ使用の際に掲載された論文の報告を研究者に求めている.これは国民の税金で支えられて収集された出生コホートデータがいかに多くの研究者に使用され,学術的・社会的なインパクトを与えてきたかという指標に使え,将来のコホート研究維持に役立つからである.調査機関としての枠はなく外部の研究者と同格のパートナーシップのあり方がイギリスの出生コホート研究を支えているといえよう.
4.研究の公表と政策提言
立ち上げから現在までイギリス出生コホートデータを使った研究論文は数千にのぼり,学術的,社会的に大きなインパクトを残してきた.これに加え,書籍や報告書にて,研究成果がレビューされ,今後の研究方針や政府への提言が実施されてきた.これらの中でNSHDの“Children Under Five”,NCDSの“From Birth to Seven”,BCSの“From Birth to Five”は,出生コホート研究ならではの利点が活かされた代表的な書物である.MCSでも,“Children of the 21st century:From birth to nine months” “Children of the 21st century:The first five years”が刊行されている.また,“Changing Britain, Changing Lives”10)は,NSHD,NCDS,BCSのコホートデータを子ども時代から成人期までのライフコースにかけて,学校,職業,家庭,行動因子,健康など多方面から解析し,歴史的変遷による効果と,研究成果の一般化可能性とを検討した書籍である.このような所属の枠を越えた協力体制がとれる研究のあり方が,このような書籍の刊行を可能にし,英国出生コホート研究規模の維持と存続を可能にしているのではないかと思われる.
IV.日本での適用可能性
ここまで,英国出生コホートの歴史と現状について概説した.日本では長期間継続した大規模出生コホートが存在せず,出生コホートを立ち上げ,高い継続率で持続させ,社会に大きく還元できるインパクトを残す仕組みやノウハウが存在しない.長期間継続している出生コホート研究には,継続させるための創意工夫が必要である.ここで紹介した長期継続している英国出生コホートにも,グラント獲得から運用,成果発表,社会への還元に至るまで,共通点が存在する.本項ではその共通点を踏まえ,日本での適用可能性(表4)を考察する.
1.出生コホートの立ち上げ
現在,日本の多くの研究は,数年単位での研究プロジェクトによって公的な研究費が支払われており,英国と大きな違いはない.そのため,出生コホートの立ち上げには長くとも3年で結果が期待できる研究を主な目的とする必要がある.また,現在の研究の潮流から,妊娠前や周産期からの研究開始が必須となるため,出生した子の追跡期間はより短くなる.精神医学領域では発達障害がなんとか収まるが,予備的な結果を得るにとどまるだろう.医学では産婦人科および小児科領域,基礎分野では発達分野との共同研究が必須となる.また,幅広い知見が出生コホートに加えられることにより,将来的にはよりよいデータセットになると考えられる.
2.調査の計画と実施
数ある仮説や指標,測定項目の中で,どれを取り入れるかではなく,どれを削るかが重要になる.最初の研究プロジェクト期間内でまとめあげられる主な仮説との兼ね合いで強弱は出るだろうが,持続するコホート研究のためには,幅広い分野で一般化された妥当性のあるデータ収集が求められる(表3).そのため,数多くの研究者が実施しているような,ある仮説に基づいた研究のみに使用する質問票,指標セットをそのまま適応することは難しい.
コホートデータの取得には大きく分けて質問票によるものと面接によるものとがある.質問票は,参加者,研究者双方にとって簡便であるが,バイアスの問題が発生する.特に小児期から思春期の参加者の場合,身体的内容や虐待,いじめなどの設問は,保護者,教員,友人からみられる可能性があるかどうかで結果が大きく異なることがある.面接は,バイオマーカーを含めたさまざまな検査を導入できるが,検査者のトレーニングが質を高く保つために重要となる.また,自宅訪問,施設来所どちらにおいても,参加者,研究者双方に大きな負担となり,追跡率の低下を招きやすい.
近年では,デジタル機器を用いたより客観的で正確な記録方法も注目されている.例えば,携帯端末を利用した日常生活でのストレス評価やGPSを利用した行動範囲の計測による抑うつの予測31),タブレット端末を利用した認知機能計測やアンケート回答などがある.計測誤差や誤記が少なく,客観的な計測ができる一方,機器の整備やトラブルへの対処が必要となる.
いずれにしても,検査者が集中力を保ち,参加者に次回以降も参加しようと思ってもらうことが重要となる.そのためには,質問票にしても面接にしても最低限である必要があり,分量は研究代表者によって厳しくコントロールされる必要がある.
3.教育,行政,医療データとの連携
日本の特徴として,妊婦健診の充実と母子手帳制度がある.頻回の妊婦健診や出生後の乳幼児健康診査は,諸外国ではまずない.そのため,地域保健所および病院と連携し,確実なデータの取得と健診時のアンケートを組み合わせれば,諸外国にはない出生コホート研究が実施可能である.
その後の追跡,または成人の追跡では,学校,職場での健康診断や,人間ドックなどの任意健康診断との連携が欠かせない.健康診断はそれぞれ,学校保健安全法,労働安全衛生法によって定められており,多くのコホート参加者が該当する.また,学校教員の評価や学業成績は本人や両親以外の第三者による評価となり,小児期の発達をみるうえで重要なデータとなる.学校や職場と連携し,こういったデータとの連結を前提とした研究計画を事前に組み立てておくと心強い.
さらに,日本はほとんどすべての医療が公的保険で,診療報酬を用いた解析も行われている.また,住民登録が整っているため,行政データを用いることができれば引っ越し,家族構成の変化,死亡などは容易に追跡可能である.しかし,たとえ本人が同意したとしても,こうしたデータと研究データを連結することは容易ではない.諸外国では一般的である犯罪データとの連結も含めて,法律改正が課題となる.
コホート参加者の引っ越しは,英国でも問題となる.英国の場合は英語圏のため,たとえ全国を対象とした大規模コホートでも,参加者が米国などの外国に移住した場合は追跡不可能となる.日本では国内の引っ越しに対処できれば高い追跡率は十分に可能であると考えられる.それでも,対象地域外への転出入が少ない地域を選ぶほうがコストは低くなる.
4.ビッグコホートかスモールコホートか
コホートはその規模によって,数万人規模のビッグコホートか,数千人規模のスモールコホートかに分けられる.全国規模のコホートはビッグコホートになりやすく,対象地域ベースのコホートはスモールコホートになりやすい.ビッグコホートは,検出率が高められるため,例えば統合失調症の発症に関する要因など,1%以下の有病率における小さいエフェクトサイズの要因も検討することができる.スモールコホートは,検査施設や検査者の数を抑えることができるため,コストだけでなく,検査の質を保ちやすい.ALSPACはその利点を活かし,妊娠期から豊富なバイオマーカーを採取し,三世代のコホートを実現させている.
5.高い追跡率の維持
追跡率はコホート研究の要であり,追跡率が低くなれば研究実施が難しくなる.というのも,研究からの脱落はランダムに起こることはなく,一般的に男性,単身,低い社会経済状況に脱落が起こりやすい.また,思春期から青年期にかけて,脱落しやすくなる.追跡率の低下により,結果の信頼性が大きく損なわれる.
英国の出生コホートでは,追跡率を上げるためにさまざまな工夫がなされている.どのコホートでも,毎年バースデーカードやニュースレターが届き,時にはフェスティバルが開催され,参加者に楽しみながら研究結果を知ってもらったり,参加を続けることの重要性を伝えたりする.必要な場合は,各種社会資源を案内するリーフレットを配布する.さらに,生命にかかわる場合は直接参加者にコンタクトをとり,状況をお知らせする.健康診断が日本ほど一般的ではないので,研究参加がより動機づけされるという側面もある.対象者が若いコホートでは,インターネットを効果的に用い,質問票の回答が可能で,メールだけでなくTwitterやFacebookにて,次回検査の連絡,イベントの案内などが行われている.
英国では,こういった研究解析とは直接関係のないところでのリソースが充実している.どの研究所も,研究者と同程度かそれ以上の人員が確保されている.そして,研究をサポートする人員の人件費から,バースデーカード,フェスティバルの費用まで,研究費によって賄われる.研究費の使い勝手が拠出先によって異なるのは英国も共通で,そのためどのコホートも複数の大型グラントを保持し続ける必要がある.加えて各研究者が個別にグラントを取り,一部をコホート運営に拠出する必要のあるところもある.
6.データクリーニングと公開手順
コホート研究が無事実施され,順調にデータがそろってきた後も,他の研究にはない手順が必要である.まず,データが送られてきた段階でその都度,正確にデータが記録されているか,明らかに間違ってつけている箇所はあるか,間違いやすい特徴はあるか,などを確認する必要がある.場合によっては,検査者に再確認したり,質問票の微修正が必要となる.
コホート研究では,1回の計測で1,000以上の変数が取得されることもまれではない.また,重要な指標が繰り返し,複数の研究者によって使用される傾向にある.そのため,データ取得後のクリーニングが欠かせない.英国ではどのコホートにも,データクリーニングを専門とする人員が複数人おり,ローデータの打ち込みから,データ分布の確認,外れ値の処理,指標計算と計算方法の管理,研究者へのデータ拠出まで,一括して行う.研究者はクリーニング済みのデータを用い,分布などを確認したのち,解析して結果を得る.
研究の発表から公開までも,コホート研究が管理すべき項目の1つである.英国のコホート研究データは国民の共有財産という考えがあり,1つのデータセットに国内外の複数の研究者がアクセスしている.そのため,同様の研究テーマが応募される可能性があり,主に研究代表者はだれが,どのような解析をして,論文投稿までどれくらいかなどを常に把握する必要がある.また,投稿までに,解析に妥当性があるか,投稿される原稿と過去の発表論文とに齟齬がないかなどを確認している.
V.東京ティーンコホート(TTC)
「青春期の健康・発達に関する調査」(Tokyo Teen Cohort:TTC)は,総合研究大学院大学,東京都医学総合研究所,東京大学の3つの機関が連携して行う研究プロジェクト「青春期の健康・発達コホート研究」(Tokyo Teen Cohort project)の一環として実施されているコホート研究である(研究代表者 長谷川眞理子).このコホートは,世田谷区,調布市,三鷹市に在住の2012~2014年度に10歳となる子とその養育者を対象として,日常生活から健康に関する幅広い内容を,質問票と自宅訪問面接によって得ている.住民基本台帳より約14,000世帯を対象とし,20名程度の調査員が自宅訪問して参加を呼びかける形式をとる.現在,第一期調査の集計中であるが約5,000世帯の参加を予定している.2年おきの調査を予定しており,第二期調査が2014年秋より開始している.4,000世帯を追跡できたと仮定したとき,1%の発生が見込めるアウトカムについてはエフェクトサイズ0.57の要因(α=0.50,β=0.95),10%のアウトカムについてはエフェクトサイズ0.19の要因が同定できる見込みである.
TTCの目的は,思春期に起こる心身の発達がどのような要因で差異が生じ,その後の心身の健康にどういった影響を与えるかを検討することである.思春期に生じる第二次性徴をはじめとした心身の急激な発達と成長によって,親からの心理的独立や多様な人間関係の構築など,社会関係の変化や広がりが発生する.生物学的には,大脳辺縁系の急激な発達と一過性の活動亢進によって,ドパミンに代表される報酬系の機能が活発となり,新奇探索行動や衝動的で攻撃的な行動が目立つようになる6)17).また,第二次性徴に伴う視床下部-下垂体-副腎系の活動亢進により,ステロイドホルモンの分泌,反応性が大きく変化し,精神症状に関係する2)17).過去の検討より,幻覚妄想体験や抑うつ症状の出現のみならず,いじめ,暴力行為,アルコール,たばこ,違法薬物の使用などは,思春期から急激に増加する6)17).こうした環境要因は,精神症状の持続や苦痛につながり,精神疾患へと発展することが近年のコホート研究で明らかとなっている.
TTCは出生コホート研究ではないが,その計画段階から,英国出生コホート研究その他のノウハウを取り入れ,質が高く,継続率を保てるような工夫を行っている.TTCは5年の研究費によって実施するため,準備の初年度と発表がメインとなる最終年度を除いた3年間である程度の成果を出す必要がある.そのため,準備段階で,参加割合の予測,日本で未検討の重要な研究課題の設定,課題を解くためだけではなく将来を見越した指標選定,バイオサンプルへの対応など,さまざまなことが協議され計画に取り入れられた.
第一期調査の構成は,事前質問票と,自宅訪問面接および封入質問票の2つからなる.事前質問票では,子と保護者に一般的なアンケートおよび母子手帳内容の記載を求める.自宅訪問では,子と保護者に分かれ,子は身体計測,認知機能計測を実施する.その間,母は離れた場所で封入質問票を実施し,メンタルヘルスや母子関係など,回答がみられることで影響を与えうるアンケートに回答する.封入質問票は無記名で回答後,封がされる仕組みとなっており,家族や検査者が回答を閲覧できない.その後,検査者より保護者が家族構成についてのインタビューを受けている間,子は封入質問票を実施する.すべての訪問調査は1時間以内で終了するようにしており,被験者の負担を最低限にするよう組まれている.こうして得られた指標の項目数は約1,200項目となる.自宅訪問についてはさまざまな工夫がなされており,検査者は繰り返しトレーニングを受け,さらに研究者が自宅訪問に同行し,適切な質が保てているか綿密にチェックしている.また,調査の実施については,プレ調査をその都度行い,実施可能性や問題点を常に検討した.第二期調査では,タブレット端末を用いた認知課題,バイオサンプルの取得,引っ越した対象者への対応など,第一期調査からさらに発展した調査を実施している.
こうした調査が実施できるのは,該当自治体の協力が欠かせない.東京都医学総合研究所では,普段より周辺自治体とメンタルヘルスについての協議と情報交換を実施しており,コホート研究の実施について住民基本台帳の閲覧というハードルもなんとか乗り越えることができた.また,バースデーカードの送付やニュースレターの発行,参加者との意見交換会やシンポジウムの開催など,多岐にわたるフィードバックを実施している.
得られたデータは,PCに入力されダブルチェックを受ける.データの確認は各研究者が分担して実施するが,その後のデータ管理や各研究者への配布はデータ管理専門の研究補助員が管理する.また,基礎データに研究者間で齟齬がないよう,すべてのデータは頻度集計が実施されており,発表時に誤りがないようダブルチェックが行われる.
おわりに
本稿では英国出生コホート研究の歴史と現状について概説し,精神医学やメンタルヘルスへの貢献を紹介し,日本における応用可能性について検討した.出生コホート研究は,立ち上げから維持し,結果が得られるまで莫大な費用がかかる一方,その研究結果は大きなインパクトをもち,政策に反映しやすい.また,その実施と運営には,さまざまなノウハウが存在する.日本でも国家資産としての出生コホート研究の実施が望まれる.日本ではさまざまなところで質の高いデータが数多く得られているが,それを結び付ける法制度がなく,多方面での検討を研究調査で実施するための法整備が必要である.
本総説は,日本学術振興会「頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム」による英国派遣,および文部科学省 科学研究費補助金 新学術領域研究「精神機能の自己制御理解にもとづく思春期の人間形成支援学」の調査結果に基づいて執筆した.
なお,本論文に関連して開示すべき利益相反はない.
謝 辞 本総説の執筆に関し,東京都医学総合研究所の山崎修道(以下,敬称略),西田淳志,安藤俊太郎,飛鳥井望,総合研究大学院大学の長谷川眞理子,東京大学の笠井清登に謝意を表します.また,本総説の執筆に関する情報提供として,Diana Kuh教授,Louise Arsenault准教授,Stanley Zammit上級講師,Glyn Lewis教授,Lynn Molloy代表に謝意を表します.
1) Addington, J., Saeedi, H., Addington, D.: The course of cognitive functioning in first episode psychosis: changes over time and impact on outcome. Schizophr Res, 78; 35-43, 2005
2) Archibald, A. B., Graber, J. A., Brooks-Gunn, J.: Pubertal Processes and Physiological Growth in Adolescence (ed by Adams, G. R., Berzonsky, M. D.). Blackwell Publishing Ltd, Oxford, p.24-47, 2006
3) Bath, S. C., Steer, C. D., Golding, J., et al.: Effect of inadequate iodine status in UK pregnant women on cognitive outcomes in their children: results from the Avon Longitudinal Study of Parents and Children (ALSPAC). Lancet, 382; 331-337, 2013
4) Boyd, A., Golding, J., Macleod, J., et al.: Cohort profile: the 'children of the 90s'-the index offspring of the Avon Longitudinal Study of Parents and Children. Int J Epidemiol, 42; 111-127, 2013
5) Cable, N., Bartley, M., McMunn, A., et al.: Gender differences in the effect of breastfeeding on adult psychological well-being. Eur J Public Health, 22; 653-658, 2012
6) Casey, B. J., Duhoux, S., Malter Cohen, M.: Adolescence: what do transmission, transition, and translation have to do with it? Neuron, 67; 749-760, 2010
7) Colman, I., Wadsworth, M. E., Croudace, T. J., et al.: Forty-year psychiatric outcomes following assessment for internalizing disorder in adolescence. Am J Psychiatry, 164; 126-133, 2007
8) Connelly, R., Platt, L.: Cohort Profile: UK Millennium Cohort Study (MCS). Int J Epidemiol, 43; 1719-1725, 2014
9) Elliott, J., Shepherd, P.: Cohort profile: 1970 British Birth Cohort (BCS70). Int J Epidemiol, 35; 836-843, 2006
10) Ferri, E., Bynner, J., Wadsworth, M.: Changing Britain, Changing Lives: Three Generations at the Turn of the Century. Institute of Education, London, 2002
11) Fraser, A., Macdonald-Wallis, C., Tilling, K., et al.: Cohort profile: the Avon Longitudinal Study of Parents and Children: ALSPAC mothers cohort. Int J Epidemiol, 42; 97-110, 2013
12) Fusar-Poli, P., Deste, G., Smieskova, R., et al.: Cognitive functioning in prodromal psychosis: a meta-analysis. Arch Gen Psychiatry, 69; 562-571, 2012
13) Gaysina, D., Hotopf, M., Richards, M., et al.: Symptoms of depression and anxiety, and change in body mass index from adolescence to adulthood: results from a British birth cohort. Psychol Med, 41; 175-184, 2011
14) Gur, R. C., Calkins, M. E., Satterthwaite, T. D., et al.: Neurocognitive growth charting in psychosis spectrum youths. JAMA Psychiatry, 71; 366-374, 2014
15) Iwashiro, N., Suga, M., Takano, Y., et al.: Localized gray matter volume reductions in the pars triangularis of the inferior frontal gyrus in individuals at clinical high-risk for psychosis and first episode for schizophrenia. Schizophr Res, 137; 124-131, 2012
16) Jones, P., Rodgers, B., Murray, R., et al.: Child development risk factors for adult schizophrenia in the British 1946 birth cohort. Lancet, 344; 1398-1402, 1994
17) 笠井清登, 藤井直敬, 福田正人ほか: 思春期学. 東京大学出版会, 東京, 2015
18) Khandaker, G. M., Barnett, J. H., White, I. R., et al.: A quantitative meta-analysis of population-based studies of premorbid intelligence and schizophrenia. Schizophr Res, 132; 220-227, 2011
19) Khandaker, G. M., Stochl, J., Zammit, S., et al.: A population-based longitudinal study of childhood neurodevelopmental disorders, IQ and subsequent risk of psychotic experiences in adolescence. Psychol Med, 44; 3229-3238, 2014
20) Koike, S., Takizawa, R., Nishimura, Y., et al.: Different hemodynamic response patterns in the prefrontal cortical sub-regions according to the clinical stages of psychosis. Schizophr Res, 132; 54-61, 2011
21) 小池進介: 近赤外線スペクトロスコピィを用いた統合失調症の予後予測と状態像把握. 精神経誌, 115; 863-873, 2013
22) MacCabe, J. H., Wicks, S., Lofving, S., et al.: Decline in cognitive performance between ages 13 and 18 years and the risk for psychosis in adulthood: a Swedish longitudinal cohort study in males. JAMA Psychiatry, 70; 261-270, 2013
23) MRC Cohort Strategic Review Subgroup: Maximising the value of UK population cohorts: MRC Strategic Review of the Largest UK Population Cohort Studies. Medical Research Council, London, 2014
24) Nagai, T., Tada, M., Kirihara, K., et al.: Auditory mismatch negativity and P3a in response to duration and frequency changes in the early stages of psychosis. Schizophr Res, 150; 547-554, 2013
25) Poulton, R., Caspi, A., Moffitt, T. E., et al.: Children's self-reported psychotic symptoms and adult schizophreniform disorder -A 15-year longitudinal study. Arch Gen Psychiatry, 57; 1053-1058, 2000
26) Power, C., Elliott, J.: Cohort profile: 1958 British birth cohort (National Child Development Study). Int J Epidemiol, 35; 34-41, 2006
27) Ramchandani, P., Stein, A., Evans, J., et al.: Paternal depression in the postnatal period and child development: a prospective population study. Lancet, 365; 2201-2205, 2005
28) Reichenberg, A., Caspi, A., Harrington, H., et al.: Static and dynamic cognitive deficits in childhood preceding adult schizophrenia: a 30-year study. Am J Psychiatry, 167; 160-169, 2010
29) Richards, M., Barnett, J. H., Xu, M. K., et al.: Lifetime affect and midlife cognitive function: prospective birth cohort study. Br J Psychiatry, 204; 194-199, 2014
30) Richards, M., Shipley, B., Fuhrer, R., et al.: Cognitive ability in childhood and cognitive decline in mid-life: longitudinal birth cohort study. BMJ, 328; 552, 2004
31) van de Leemput, I. A., Wichers, M., Cramer, A. O., et al.: Critical slowing down as early warning for the onset and termination of depression. Proc Natl Acad Sci U S A, 111; 87-92, 2014
32) van Os, J., Jones, P., Lewis, G., et al.: Developmental precursors of affective illness in a general population birth cohort. Arch Gen Psychiatry, 54; 625-631, 1997
33) Wadsworth, M., Kuh, D., Richards, M., et al.: Cohort Profile: The 1946 National Birth Cohort (MRC National Survey of Health and Development). Int J Epidemiol, 35; 49-54, 2006
34) Wadsworth, M. E., Butterworth, S. L., Hardy, R. J., et al.: The life course prospective design: an example of benefits and problems associated with study longevity. Soc Sci Med, 57; 2193-2205, 2003
35) Welham, J., Isohanni, M., Jones, P., et al.: The Antecedents of Schizophrenia: A Review of Birth Cohort Studies. Schizophr Bull, 35; 603-623, 2009