Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第3号

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特集 抗うつ薬の適切な使用法をもう一度考えてみる
気をつけるべき抗うつ薬の薬物相互作用
古郡 規雄
弘前大学大学院医学研究科神経精神医学講座
精神神経学雑誌 118: 152-158, 2016

 薬物併用療法は,一般的に特別な薬物の副作用を軽減させるもしくは治療効果を増大させるために臨床の場で用いられるが,薬物相互作用が起こることにより治療効果は下がり,多くの副作用を招く結果となり臨床上注意が必要となる.これまで,CYPの研究が盛んに行われ,薬物動態学的相互作用の予測がある程度可能になった.基本的に,同じ代謝酵素をもつ薬物同士の併用は,酵素を互いに競合的に阻害し合うため薬物相互作用が起こる可能性がある.しかし,親和性などの差から,影響を受けやすい一般的な薬物と影響を与えやすい特殊な薬物に分けられる.抗うつ薬で薬物相互作用に注意する必要あるものはフルボキサミンとパロキセチンである.フルボキサミンはCYP1A2やCYP2C19を,パロキセチンはCYP2D6を強力に阻害する作用をもつ.さらにこの両薬はP糖蛋白の阻害作用ももつため,新しいタイプの薬物相互作用も明らかになってきた.一方,SSRIと非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID)の併用で上部消化管出血のリスクがさらに高まる薬力学的相互作用が存在する.特に,他院で薬を処方され詳細不明な場合はこれらの抗うつ薬は処方しない方が安全である.今後は,遺伝的素因による薬物動態の個人差および薬物受容体の個人差もまた検討項目として残されており,患者ごとの状態を考慮した薬物相互作用に関する臨床診断がさらに求められている.

索引用語:薬物相互作用, 薬物動態, CYP, P糖蛋白>
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