うつ病治療の新たな選択肢として国内で承認の動きがあるrTMS治療について,その現況と課題について紹介した.大規模なランダム化比較試験(RCT)の結果を踏まえて,米国食品医薬品局(FDA)が2008年10月に認可したことが契機となり,現在では,複数の国で4つの機器が認可され,RCTのメタ解析や承認後の実臨床において良好な結果が示されている.頻度の高い有害事象は一過性の刺激部位周辺の疼痛や不快感であり,忍容性は高いが,ごくまれにけいれんを生じることがあるので(1,000人に1人と見積もられている)留意が必要である.慢性に経過している,中等度以上の薬物治療抵抗性や薬物療法に不耐性のうつ病の症例などが最もrTMSの適応となると考えられる.
第111回日本精神神経学会学術総会
rTMS(反復経頭蓋磁気刺激)によるうつ病治療の現況と課題
和歌山県立医科大学医学部神経精神医学教室
精神神経学雑誌
118:
98-105, 2016
<索引用語:うつ病, 反復経頭蓋磁気刺激, 有効性, 安全性>