Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第12号

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特集 東洋的叡智と心理療法―思想,方途と目的地―
禅とマインドフルネス―そのかたちとこころ―
熊野 宏昭
早稲田大学人間科学学術院
精神神経学雑誌 118: 910-915, 2016

 マインドフルネスとは,禅のこころに相当すると思われる.「こころ」とは,禅という「かたち」の実践がもつ機能のことであり,そこで実現される効果や影響力に相当するものと考えられる.その関係は,日本文化にある「かたちから入って,こころに至る」という言葉から理解可能である.マインドフルネスの実践法では,注意の集中をもたらすサマタ瞑想と,注意の分割を実現するヴィパッサナー瞑想が組み合わされ,思考の発生を抑えつつ,現実や自己の実像を捉えることが可能になる.マインドフルネス瞑想の戦略には,3つの気づきの前線を形成しつつ,気づいて,反応を止め,いつものパターンから抜け出すという共通性がある.その結果,非適応的な学習の消去と,等身大の現実に基づいた「価値」の明確化と行動の選択が可能になるため,さまざまな病態に大きな効果を示す.通常は,特定の「かたち」を通してでないと,求める効果を手にすることはできないが,日本文化には「かたちより入り,かたちより出る」という言葉もある.これが意味するところは,生き方そのものになったとき,かたちは必要なくなるということであり,マインドフルネスも一過性の心理状態ではなく日々の生き方のような心理特性の変化を引き起こすことを目標にしている.

索引用語:かたちとこころ, サマタ瞑想, ヴィパッサナー瞑想, 非適応的学習の消去, 行動の選択>
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