Advertisement第117回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第12号

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総説
食からメンタルヘルスを考える―栄養精神医学の役割と可能性―
松岡 豊1), 浜崎 景2)
1)国立がん研究センター社会と健康研究センター健康支援研究部
2)富山大学医学部公衆衛生学講座
精神神経学雑誌 118: 880-894, 2016

 精神障害による疾病負担は,今や国境を越えて重要な公衆衛生学的課題の1つであり,その克服が強く期待されている.精神障害は,遺伝因子,環境因子,そしてその相互作用によって生じるので,環境や生活への働きかけは,実施可能な有効な手段となりうる.脳はその機能と構造において,さらには神経発達や神経栄養因子の働きもまた栄養因子によって影響を受ける.近年,食・栄養が精神障害の発症にかかわる重要な因子であること,食・栄養による精神障害の予防や治療の可能性が認知されるようになり,2013年に国際栄養精神医学会(ISNPR)が創設された.本稿はISNPRが2015年に発表した学会声明ならびにOpieらの総説をもとに,特にうつ病の予防・治療に焦点をあて,一般市民と臨床家が実行可能な実践的な食生活の勧めを提供することを目的にする.Opieらの推奨する5つの食生活習慣は以下の通りである.①地中海式,ノルウェー式,日本式などの伝統的な食習慣を見直す,②果物,野菜,豆類,全粒穀類,ナッツ,種子を食す,③ω3系脂肪酸を豊富に含んだものを食す,④加工食品,ファストフード,菓子を減らす,⑤不健康な食品から健康的な食品に置き換える.加えて⑥腸内細菌叢に関心をもつ,を紹介する.食・栄養と精神障害の関連を説明する生物学的メカニズムが全て解明され,二者の関連がランダム化比較試験で立証されているわけではないが,少なくとも現在報告されている研究をまとめると,健康的な食・栄養を取り入れる介入がうつ病に対して防御的であることはいえるであろう.食生活を変えることは,誰もがいつからでも始めることができる.食・栄養からメンタルヘルスを考える視点,すなわち栄養精神医学は幅広い集団に適用可能であり,メカニズムの解明も含めて今後のエビデンスの蓄積と治療・予防への実装が期待される.

索引用語:食, うつ病, 地中海式食事, 自然食品, ω3系脂肪酸>
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