Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第118巻第10号

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特集 治療関係に困ったら
後期研修医へのコンサルテーションの経験―TPAR,東大精神科における新しい試み―
藤山 直樹
上智大学総合人間科学部
精神神経学雑誌 118: 787-793, 2016

 日本の精神科卒後研修の最大の問題点の1つは精神療法の研修である.それは,専門的な精神療法というより,日常臨床のなかで用いられる,「通院精神療法」「入院精神療法」の根拠となる,協力関係の構築と維持が難しい精神科患者との治療関係にかかわるスキルである.多くの諸外国では精神科専門医の資格取得の要件として,スーパービジョンを受けることが挙げられている.治療チームの外部にいる上級の医師に定期的に治療関係について報告し,討論と助言を得る継続的なセッションを得ることは,精神科医の基礎的スキルと精神科医としての同一性の獲得に大きな意義がある.ここではその一部を論じた.しかし,日本においては,スーパーバイザーとなりうる人材が十分でなく,地域的にも偏在しているという事情があり,多くの研修医に個人スーパービジョンを供給することが困難である.大学の医局や病院がコンサルタントを招聘して年に数度の精神療法的カンファランスが行われることもあった.それにも一定の意義はあるが,各研修医のケース提示の機会が少ないこと,治療チーム内のさまざまな上下関係や競争関係といった葛藤によって本音の討論ができにくいことなどの限界をもっていた.東京大学医学部付属病院精神神経科では,2年前よりTPAR(Training in Psychotherapeutic Approaches for Residents)という研修プログラムを発足させた.数名のスーパーバイザーを確保し,研修医を2~3名のグループに分け,月に1回外部のスーパーバイザーのところに行って治療関係についてのコンサルテーションを受け,半年後に別のスーパーバイザーにローテートする.これによって外部のスーパーバイザーに小集団で指導を受けることにより,より本音の討論が可能になり,各研修医のケース提示の機会も飛躍的に増加する.このプログラムの成果はまだ十分に検証されていないが,極めて有望なプログラムであると期待される.

索引用語:精神科初期研修, 精神療法, 治療関係, スーパービジョン, コンサルテーション>
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