精神医学が医学への仲間入りを果たそうとするなかで客観的アウトカムが重視されてきたが,近年,主観的アウトカムの重要性が再び指摘されるようになった.リカバリー概念の登場である.医療機関での診療や精神病理学・生物学的精神医学に慣れ親しみ,個人の生活や人生に思いを致す資質が失われつつある私たち精神科医は,リカバリー概念を過度に医療化した形で輸入するおそれがある.今後の科学的検討に向けてリカバリーの構成概念についての論点整理を行い,リカバリー志向性のサービスの実現と普及への道程を示した.
リカバリーの意味とその科学
東京大学大学院医学系研究科精神医学
精神神経学雑誌
118:
744-749, 2016
<索引用語:主観, アウトカム, リカバリー, ウェルビーイング, 主体価値>