Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第8号

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特集 精神科医療におけるスピリチュアリティとレジリエンス
精神科医療におけるスピリチュアリティとレジリエンス
山田 和夫1)2), 山田 和惠2)
1)東洋英和女学院大学
2)横浜尾上町クリニック
精神神経学雑誌 117: 607-612, 2015

 20世紀末,WHOの健康の定義にそれまでのBio-Psycho-SocialモデルからSpiritual概念が導入されるようになってきた(現在まだ保留中).Spiritual Healthを日本語に訳すことは難しいが,ターミナルケアにおいては,スピリチュアルペインに対してスピリチュアルケアの必要性が謳われるようになり,実践されている.同様に精神科医療においてもスピリチュアルケアの重要性が認識されるようになってきた.一方,生体が有する自然な回復力,復元力を意味するResilienceの認識が回復過程において重要な視点であることが主張されるようになってきた.ResilienceはBio-Psycho-Social,さらにはSpiritualな次元からの回復力を意味しているように思われる.21世紀の精神科医療モデルを考えるにあたり,SpiritualityとResilienceの認識が重要と考え本特集を企画した.神谷美恵子は秀でた精神科医であり詩人であった.その背景にはSpiritualityの覚醒とそれによるResilienceの力が大きくあった.神谷は21歳時,肺結核に罹患し軽井沢で一人で療養生活を送るようになる.その際,重度のうつ病になり一人もがき苦しむ生活を送る.その苦しみに耐え抜いた際,神々しい光を浴びるという神秘体験をする.その体験によって一気にうつ病は治ってしまう.治るだけでなく,今まで以上に元気になり,精力的に活動するようになる.生かされている感覚をもち,生きる大いなる喜びを感じるようになる.と同時に,結核も治ってしまう.これが,Spiritualityの覚醒であり,Resilienceの発現である.神谷の人生をみると,その後ずっと精力的で,40代で子宮がんになるも生命力で克服し,50代で狭心症,TIA,心筋梗塞を起こし17回も入退院を繰り返すが,そのような生命にかかわるような病的危機に対しても怯むことなく精力的な執筆活動を続けた.一度覚醒したSpiritualityとResilienceは生涯続くようである.

索引用語:スピリチュアリティ, レジリエンス, 神谷美恵子, 柳澤桂子, 神秘体験>
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