Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第6号

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特集 精神療法・カウンセリングの副作用
精神分析と副作用
白波瀬 丈一郎
慶應義塾大学医学部精神・神経科学教室
慶應義塾大学ストレス研究センター
精神神経学雑誌 117: 438-444, 2015

 副作用という視点から精神分析を眺めると,その歴史はまさに副作用対策の歴史であるといえる.ただしそれは,治療法としての精神分析の不完全さや脆弱性を意味するだけではない.当初副作用と思われた現象から治療的意義を見出し,その発見を活用して治療法として精緻化してきた精神分析の発展の歴史でもある.さらに,その過程でみられる研究姿勢は,精神分析の基本的な治療姿勢につながっている.すなわち,治療者は患者の言動を単純に一側面で断じるのではなく,そこにさまざまな意味や価値を積極的に見出して,患者の人生を実りあるものにするべく努力し続けるのである.この治療姿勢は紛れもなく精神分析の独自性の1つである.この精神分析の独自性の明確化を念頭におき,精神分析と副作用についての議論を行った.精神分析の治療過程では,抵抗と呼ばれる現象が必ず出現する.それは治療の進展を阻むだけではなく,患者にもさまざまな不利益をもたらす可能性があり,副作用に相当する.しかし,その現象を転移という視点から捉え直すと,それは精神分析にとって不可欠なものとなり,精神分析の主作用に含まれることになる.抵抗の副作用としての側面を最小化し,主作用としての側面を最大化するための対策として,理論的整理,力動的な評価,治療の構造化と治療者の態度,そして治療者の訓練について述べた.最後に,精神分析には副作用という視点がそぐわない点があることについてふれた.

索引用語:精神分析, 副作用, 転移, 治療構造, 治療者の態度>
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