神経性無食欲症(AN)は精神にも身体にも症状が出現し,また行動上の問題も少なくなく,しばしば入院治療を必要とするために,有床総合病院精神科がその治療について最も期待されていると思われる.しかし,有床総合病院精神科は数が少なく,さらに対応できる少ない医療機関に患者が集中するために,十分な対応ができない場合もある.京都でも有床総合病院精神科は少なく,ANの入院治療は2つの大学病院に集中する傾向にある.筆者の勤務する大学病院では,特に救急入院など,依頼されるすべての患者に対応することが困難になっている.そのためAN入院治療に関して,関係の単科精神科病院と協力体制を作る取り組みを始めた.今後,大学病院と協力病院とで,患者の病態や時期により役割分担を進めていくなど検討している.AN治療は一極集中ではなく,医療機関が役割分担をしながら協力体制を作っていくことが必要と思われる.
有床総合病院精神科における神経性無食欲症治療―地域での現状と治療体制の構築―
京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学
精神神経学雑誌
117:
348-352, 2015
<索引用語:神経性無食欲症, 有床総合病院精神科, 治療体制>