Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第3号

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特集 高機能発達障害の職場における課題と精神科医療の取り組み
民間企業での発達障害者への就労支援の取り組み
鈴木 慶太
株式会社Kaien代表取締役
精神神経学雑誌 117: 221-227, 2015

 株式会社Kaien(以下,当社)は2009年に発達障害者が働くことを支援するために設立された会社である.現在秋葉原をはじめ4ヵ所で日々約100人が通う就労移行支援事業を展開している.また発達障害者に特化した人材紹介,最近増え始めた発達障害のある大学生のサポート,中高生を中心とした発達障害児向けのお仕事体験の各種サービスを提供している.発達障害の特性がある人の就職支援には2つの大きな肝があると思っている.1つは想像力が弱いために,どんな仕事が向いているかわかりにくいことである.口頭や文書で説明してもなかなかわかってくれない.このために実際に様々な職種を体験させる場が必要である.言葉で説得するよりも実地で本人に納得してもらうことである.もう1つは職場での対人コミュニケーションを細かく伝えることである.この場合でも,言葉での知識の伝授だけでは不十分である.当社では,仕事の流れの中で,気になった言動についてアドバイスを小出しにすることで,発達障害の当事者がコミュニケーションの型を身につけやすくしている.実際の職場に近い環境(疑似職場)で,上司と部下の,同僚同士の,コミュニケーションの練習を行うことが何よりも重要である.当社のスタッフの多くは,それまでの経験で福祉や医療にふれていなかった人材,つまり医療・福祉・教育などの非専門家である.それでも上記の2つのポイントを守れば一定程度の就労支援が行えている実情がある.これには大きな可能性がある.一度入社した後不適応を起こした社員でも,専門的な機関に頼りすぎることなく企業内で復職につなげられる可能性があるほか,大学など発達障害者の増加が指摘されているような教育機関でも対応できる余地があると考えられるからだ.発達障害はグレー層までを含めると人口の数%にも上るとみられ,専門機関だけではすべての対応が難しい.当社のような非専門家集団が,比較的軽度な人たちのサポートを担うことが今後求められると考えられる.

索引用語:自閉症スペクトラム, 職業訓練>
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