Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第2号

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緊急教育講演
第110回日本精神神経学会学術総会
ゼプリオン投与中の死亡例から,我々は何を学ぶべきか?
藤井 康男
山梨県立北病院
精神神経学雑誌 117: 132-145, 2015

 4週間の持続期間を有する持効性注射製剤であるゼプリオン(paliperidone palmitate)が本邦に導入されて6ヵ月間の推定投与例約11,000例において,32例の死亡例が市販直後調査で報告された.その半数の16例は広義の突然死(12例は狭義の突然死,4例は突然死の可能性),4例は悪性症候群関連の死亡,7例は自殺であり,悪性腫瘍,肺炎など重篤な基礎疾患を有する患者に本剤を投与してその後に死亡した例も存在していた.ゼプリオンの全死亡リスクについて他の調査との比較では高くはなかったが,突然死リスクは海外の調査との比較では高い可能性があった.欧米各国における多数の報告によれば統合失調症患者の平均寿命は一般人口と比べて10~25年短く,このmortality gapは自殺よりも,心血管系疾患などの身体疾患による死亡リスクがより強く影響している.突然死の少なくとも半数以上は,心筋梗塞などの心臓突然死によると推定されるので,mortality gapをもたらす最大の原因が,心臓突然死による死亡の差異である可能性が高い.今回のゼプリオン問題によって,わが国の精神科医療の中で,忘れられていた,あるいは無視されていた統合失調症患者の突然死問題が白日のもとに引きずり出されたことになる.これを機に,我々はこの問題に真剣に取り組むべきであり,実態を正確に把握した上で,死亡リスクを減らす努力をしなければならない.

索引用語:パリペリドンパルミチン酸エステル持効性懸濁注射液, 心臓突然死, メタボリック症候群, 悪性症候群, 統合失調症>
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