進行・終末期のがんは,医学の進歩をもってしても技術的に取り除くことは難しく,患者本人とその家族は,その状況に適応するという課題と向き合うこととなる.患者・家族が適応に至るまでの過程を説明する理論的枠組みとしては「心的外傷後成長モデル」などがあり,患者・家族は潜在的に適応力を有していることを示唆している.医療者が患者・家族を支持し続けることは,適応へのプロセスを進めるための手助けになる.しかし,支持し続けることは簡単ではなく,厳しい病状に向き合う患者や家族,さらに他の医療者とかかわっていくことを恐れずに,当事者のニーズに応じて柔軟な対応ができることが必要である.
進行・終末期がん患者への精神療法―ただ支持し続けることの大切さ―
国立がん研究センター中央病院精神腫瘍科
精神神経学雑誌
117:
989-994, 2015
<索引用語:精神腫瘍学, 緩和ケア, 適応, 心的外傷後成長, 支持的精神療法>