Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第11号

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特集 精神疾患をもつ女性の妊娠・出産を支えよう
統合失調症の人の恋愛・結婚・子育て支援
池淵 恵美
帝京大学医学部精神神経科学講座
精神神経学雑誌 117: 910-917, 2015

 恋愛・結婚・子育てには当事者や家族の人たちの強い関心や希望があり,統合失調症のリカバリーにつながる体験となる.筆者は工夫して二人の生活を実らせている当事者たちをたくさん見聞きしてきた.しかし実態は厳しく,一部の人しか夢をかなえることができていない.そのために当事者や家族にあきらめがあり,専門家の中にも悲観論やかかわろうとしない無関心がある.性愛行動への関心については,統合失調症の人たちも大きく一般の人口と変わることはないようである.筆者は回復をめざそうとする早い段階から,結婚や修学・就労を治療の目標とすることを話し合っている.発症により,大人としての振る舞いを学習する年頃に仲間と隔絶した生活を送りやすいため,自然な恋愛体験ももてるような場への参加を保証し,心理教育やスキルの学習の機会を提供する必要性がある.結婚や挙児はさらに社会的経験やスキルが必要なので,これについても専門的な支援の経験や技術が要請される.投薬については専門的な知識はもちろんだが,当事者も専門家もともにリスクを考慮したよりよい選択をしていくことが求められる.子育て支援には家族や地域や子ども福祉の専門家たちとの連携がどうしても必要になる.先駆的な浦河べてるの家の試みを紹介した.最後に治療の場でしばしば専門家が恋愛や結婚について反対する立場をとりやすい傾向について考察した.治療の場におけるこうした支援について,専門家は当事者の目を通して率直な議論をしてほしいと思う.

索引用語:統合失調症, 恋愛・結婚, 妊娠・出産, 子育て>
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