Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第10号

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特集 DSM-5のインパクト―臨床・研究への活用と課題―
DSM-5のインパクト―臨床・研究への活用と課題:不安症群
塩入 俊樹
岐阜大学大学院医学系研究科精神病理学分野
精神神経学雑誌 117: 851-861, 2015

 DSM-5がわが国の精神医学界に与えたインパクトは,DSM-IVのときとは比較にならないほど大きい.それは,今回の翻訳作業に関して用語の統一という最大の課題のために,当学会において「精神科病名検討連絡会」が組織され,2年の間,議論を重ね,やっと完成したという事実からも想像されよう.したがって,わが国の精神医学全般において,今後DSM-5の有用性はますます高まっていくであろう.しかしながら,「DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル」は邦文800ページを超える内容であり,我々精神科医がこれらの膨大な情報を今後どのように臨床・研究に活用・応用していくかが問われている.そこで本特集が企画された.本稿では,不安症群(不安障害群)に特化してDSM-5の臨床および研究への活用と課題について述べる.言うまでもないことかもしれないが,DSM-5の不安症群では,以前は不安症群の下位分類であった「心的外傷後ストレス障害」と「急性ストレス障害」,そして「強迫症」が除かれ,その代わり,「分離不安症」と「選択性緘黙」が加わった.さらに,「広場恐怖(症)」は新たに1つの疾患単位として「パニック症」から独立し,「パニック発作」もDSM-5に記載された全ての疾患に対して特定できることになった.このような改訂によって,第5章の冒頭の記載のごとく,「不安症群は,共通して,過剰な恐怖および不安と,関連する行動の障害特徴をもつ障害を含んでいる」とシンプルに言い切ることが可能となった.つまり,強迫症状や解離症状を呈している不安を除くことで,不安症群をよりピュアな群として表現したといってよい.このことは,実臨床における診断をより迅速にさせ,病態解明研究の際にもより有用と考えられる.

索引用語:不安症群, DSM-5, パニック症, 広場恐怖症>
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