Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第10号

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特集 DSM-5 のインパクト―臨床・研究への活用と課題―
DSM-5における双極性障害とうつ病―臨床・研究での有用な使い方を考えてみる―
加藤 正樹
関西医科大学精神神経学教室
精神神経学雑誌 117: 837-843, 2015

 双極性障害,うつ病関連疾患,いわゆる“気分障害”のDSM-5での変更点を大きく分けると,①診断カテゴリー・疾患単位の変更,②より詳細なSpecifier(特徴を伴う)の追加,③重症度評価であろう.①に関して,最も大きな変更はDSM-IVまでの気分障害というカテゴリーが姿を消し,DSM-5では双極性障害と抑うつ障害群が独立したことであろう.その背景にはDSM-IV-TR以降の遺伝子研究と脳画像研究のエビデンスの蓄積により,うつ病は統合失調症よりも双極性障害から遠い位置にあることが明らかとなったことによる.双極性障害では疾病発症のリスク遺伝子がいくつか明らかになっている一方で,うつ病ではリスク遺伝子が見いだされておらず,評価者間の診断一致率も低いことより,診断カテゴリーとしては特異度が不十分であり,病態生理的に本来のうつ病と異なるフェノコピーが含まれてしまうことが,リスク遺伝子や気分障害のスペクトラム的解釈がうまくいかない一因と考えられる.変更点②および③がこの問題解決の一助となるかもしれない.変更点②に関しては双極性障害,うつ病のどちらにも混合性の特徴と,不安の特徴を追加できることになった.変更点③に関しては,各症状の重症度を2つのレベルで簡易評価することが推奨されており,レベル2では,例えばうつ症状であれば,私は価値がない,無力である,悲しいなどの8症状,躁症状であれば,私は普段より,楽しく愉快である,自信がある,よくしゃべるなどの5症状を評価する.これらは,混合性の特徴で定義されている各症状を評価することにも直結している.このように,ディメンショナルな観点から評価することは,より適切なアウトカムとの関連研究を促進するだけではなく,詳細な臨床像を把握することで,エビデンスを細やかに活用でき,臨床上でも有用と考える.本セッションではDSM-5の変更点とその意義をひも解き,臨床・研究における有用な使い方に着目してみたい.

索引用語:混合性の特徴, 不安性の苦痛, 気分障害, うつ病, 重症度評価>
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