Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第10号

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資料
統合失調症死亡例の検討―心電図上のQT延長を中心として―
松田 公子1), 加瀬 浩二1), 原 広一郎2), 浅井 禎之2), 浅井 邦也4), 櫻井 正太郎5), 湯本 哲郎5), 高山 幸三5), 秀野 武彦2)3)
1)医療法人静和会浅井病院薬剤部
2)医療法人静和会浅井病院精神科
3)医療法人静和会浅井病院内科
4)日本医科大学千葉北総病院循環器内科
5)星薬科大学薬学部
精神神経学雑誌 117: 826-836, 2015
受理日:2015年4月15日

 【目的】一般人口より死亡年齢が低いとされる統合失調症患者の死亡に及ぼす因子について,抗精神病薬が影響するQT延長との関連を中心に後方視的に検討した.【方法】浅井病院における死亡患者406名を対象に,統合失調症群と非精神疾患群の平均死亡年齢を比較検討した.統合失調症死亡群に関して,死亡前3年間の薬剤関連因子,血液検査値,心電図検査結果などについて,統合失調症生存群と比較検討を行った.さらに,統合失調症患者と当院人間ドック受診者における年齢階層別QT値に関する比較検討を行った.【結果】平均死亡年齢は,非精神疾患群84.0±0.57歳に対し,統合失調症群は63.4±2.63歳で,統合失調症群が有意に低値であった(p<0.001).統合失調症死亡群と統合失調症生存群の2群間の2変量解析では,死亡2年前,1年前および0.5年前のQT値,さらに0.5年前のAST値とALT値に有意差がみられた.対象期間中のQT延長発現率は統合失調症生存群24.5%に対して統合失調症死亡群では52.0%であった.多重ロジスティック回帰分析により,QT値が延長し,かつALT値が正常範囲内であっても比較的高値の群では死亡の割合が高いことが推測された.年齢階層別QT値は統合失調症群,人間ドック受診群とも年齢とQT値に正の相関を認め(R2=0.9061,0.9276),30~70歳代においては統合失調症群のQT値が有意に高値を示していた.【結語】統合失調症群の平均死亡年齢は,非精神疾患群に比較し約20歳低かった.統合失調症死亡群では,統合失調症生存群と比較して死亡2年前から有意なQT延長を示していたことから,統合失調症群が非精神疾患群より死亡年齢が低くなる要因として,QT延長が何らかの影響を及ぼしている可能性が考えられた.QT値は統合失調症群,人間ドック受診群ともに年齢と正の相関が認められ,統合失調症群のQT値は同年代の人間ドック受診群より有意に高い傾向が認められた.本研究により,統合失調症疾患治療において,心電図検査,血液検査などを定期的に実施するなど,QT値ならびに肝機能に対する十分な注意が必要であることが示唆された.

索引用語:統合失調症, QT延長, 死亡年齢>
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