Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第10号

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症例報告
MirtazapineとWarfarinとの併用によりPT-INRが著明に延長した1例
西村 浩1), 川上 正憲2)
1)厚木市立病院精神神経科
2)那須高原病院
精神神経学雑誌 117: 820-825, 2015
受理日:2015年3月11日

 心疾患のためwarfarin投与を受けていた70歳代男性が呈した不安緊張状態に対し近医からmirtazapine単剤投与を受けて鼻出血をきたし,PT-INR(プロトロンビン時間国際標準比)が1.21から7.93と著明に延長したが,両剤の中止により鼻出血はただちに消失し,PT-INRも速やかに正常化した.Warfarinは主として肝薬物代謝酵素CYP1A2,CYP2C9,CYP2C19およびCYP3A4により代謝され,併用注意薬物は薬効分野で25分野に及び,向精神薬では抗うつ薬(trazodone hydrochloride,amitriptyline hydrochlorideなどの三環系抗うつ薬,paroxetin hydrochloride hydrateおよびfluvoxamine maleate),抗てんかん薬(carbamazepine,primidone,phenytoinおよびsodium valproate)などが挙げられている.文献的検索によれば,quetiapine fumarateに関する報告もあるが,mirtazapineに関する報告は見出せなかった.mirtazapineの添付文書にはwarfarinとの併用注意について,プロトロンビン時間が増加するおそれがあるので,プロトロンビン時間の国際標準比(INR)をモニターすることが望ましく,機序不明と記載されている.またmirtazapineは主にCYP2D6およびCYP3A4により代謝され,CYP1A2の関与もあるが少ないとされており,両薬剤間でCYP3A4に関する競合的阻害が起きた可能性がある.本症例報告は両薬剤を併用する高齢者における薬物相互作用の厳重な監視の必要性を示すと考える.

索引用語:ミルタザピン, ワーファリン, 高齢者, 出血傾向, プロトロンビン時間国際標準比>
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