Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第117巻第1号

※会員以外の方で全文の閲覧をご希望される場合は、「電子書籍」にてご購入いただけます。
特集 うつ病治療における行動活性化―「休息と薬物療法」を超えていかに導入するか―
認知行動療法における行動活性化の実際
北川 信樹
医療法人ライブフォレスト北大通こころのクリニック
精神神経学雑誌 117: 26-33, 2015

 行動活性化に焦点をあてたアプローチは,すでにBeckの認知療法においても構成要素の1つとされてきたが,その後単独での高い治療効果が確かめられ,うつ病の認知行動療法(CBT)の中で重要な位置を占めるようになってきている.そのため,近年では臨床行動分析を基盤とした行動活性化療法が新たな治療パッケージとして開発されるに至った.その中核的な特徴は,①患者の行動制御や嫌悪体験からの回避を引き起こしている生活場面における文脈に着目し,②その悪循環を断ち切り,③患者が本来望む目的に沿った行動を促進することによって,④行動と状況との関係性(行動随伴性)を認識し,自らの行動が本来望んでいる長期的な結果に結びついていくという効力感を回復していこうとする点にある.つまり,不活発だからと闇雲に楽しい活動を増やし達成感が得られればよいということではなく,詳細な生活行動の機能分析に基づいて,非機能的にうつの病態が維持されている仕組みを協働的に明らかとし,その上で個々の価値目標に沿った健康行動を具体的にして気分に依存せずに行うことを促し,その結果検証を繰り返すことを根気よく励ましていく過程が重要と考えられる.行動活性化は,慢性化・遷延化した症例や,回復期途上でこれから社会復帰を目指す段階では,日常臨床でも導入しやすく単独でも効果的な可能性が考えられる.また,自験例からも大うつ病のCBTでは原則的に前半を行動活性化,後半を認知再構成という流れが効率的である可能性が考えられた.ただ,症状がより重症の場合には,慎重な活動モニタリングによる機能分析とスモールステップを徹底した活動計画が不可欠である.さらに,休息を是としてきたこれまでのわが国のうつ病診療に整合性を保ってこれらを導入するには,さまざまな心理教育上の工夫が必要と考えられる.特に医学モデルに基づいて非生産的な活動パターンに審判的態度をとることのないように注意すべきである.

索引用語:認知行動療法, 行動活性化, 適応, うつ病>
Advertisement

ページの先頭へ

Copyright © The Japanese Society of Psychiatry and Neurology