Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第116巻第9号

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特集 治療関係と薬物療法
薬物療法を受ける患者の気持ちとは
菊地 俊暁
杏林大学医学部精神神経科学教室
精神神経学雑誌 116: 752-757, 2014

 薬物療法を受ける患者は,薬剤の導入や継続使用に対して「不安」と「期待」を併せもっていると考えられる.不安は,薬剤の有効性や副作用,依存性などに対して抱く懸念であり,半年で50%以下にまで低下する服薬アドヒアランスに大きく影響すると考えられている.その不安を和らげるためには医師と患者の良好な治療関係が必要であり,適切なコミュニケーションが図られることが必須である.特に服用の継続期間や副作用について話し合いができる関係性にあるということは重要であると報告されている.しかしながら,医師が想定しているよりも実際には患者とのコミュニケーションは十分ではなく,医師と患者の認識に乖離があることが調査からみえてくる.特に治療についての説明は,医師の想定する半分程度の患者にしか伝わっていないという事実がある.一方,患者は薬物療法に対して,変化への期待という肯定的な側面ももっており,実際の治療成績にも影響することが知られている.すなわち期待は,効果全体の30%を占めていると報告されているプラセボ効果とも密接な関係があることが推測される.ただし,薬物療法を治療の当初から望む患者は多いわけではなく,精神的な悩みを共有して欲しいという気持ちをもって来院する患者も少なくない.その切なる希望を何らかの形でかなえていくことができなければ,薬物療法を含む治療全体への期待が低下することになる.治療形態や方法についての患者の希望を注意深く汲み取り,医師と患者のコミュニケーションを基礎とした治療関係を構築しながら,最も適切な治療を,治療者と患者の双方が納得し合意する形で導入を図ることが医師には求められるといえる.

索引用語:アドヒアランス, プラセボ効果, 期待, 乖離, 薬剤心理学>
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