Advertisement第116回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第116巻第8号

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特集 日本精神神経学会が自殺対策に果たすべき役割とは
精神科臨床からみた自殺総合対策大綱
張 賢徳1), 稲垣 正俊2)
1)帝京大学医学部附属溝口病院精神神経科
2)岡山大学病院精神科神経科
精神神経学雑誌 116: 683-689, 2014

 日本では1998年からの自殺率高止まりを受けて,2006年,国を挙げて自殺対策を総合的に進める目的で,自殺対策基本法が施行された.この基本法に基づき,翌年,政府が推進すべき自殺対策の指針として自殺総合対策大綱が策定された.そして,5年後に見直されるという当初の予定通り,5年後の2012年に大綱が改定された.基本法の理念の筆頭にあるのは,自殺の背景に様々な社会的要因があることを重視し,自殺対策を社会的な取り組みと位置付ける視点である.改定された大綱のスローガンは「誰も自殺に追い込まれることのない社会の実現を目指して」である.大綱には対策が総花的に列挙されている.“生きやすい社会の実現”が大綱の目的ならばこれでよいのだろうが,自殺予防に特化して考えると,各種対策の有効性や優先順位が書かれてしかるべきだが,そうはなっていない.また,自殺者の90%近くが自殺時に精神科の診断がつく状態であったことを考えると,精神医学的見地からは,精神科医療の拡充を含む精神保健対策が最優先されるべき自殺予防対策であると考えられるが,大綱ではそのような扱いになっていない.これらは改定された大綱でも同じである.精神科臨床にかかわる大綱の改定箇所としては,自殺未遂者対策が従来より詳しく記載されたことと,うつ病以外の精神疾患が対策の対象として言及されたことであるが,全体として精神科医療の取り扱われ方の比重は小さいままである.特に,慢性的な精神疾患を抱える人々への施策がほとんど書かれていないことは指摘しておかねばならない.本学会を含め,自殺予防にかかわる学術団体の役割として考えられることは,大綱の内容をエビデンスに基づいて整理していくことである.そして,いまだエビデンスがない領域については研究を進め,エビデンスが明らかな領域では活動の実践を支援するような行動を起こす必要があるだろう.

索引用語:自殺対策基本法, 自殺総合対策大綱, 臨床精神医学, 自殺予防>
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