Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第116巻第6号

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資料
医療観察法の運用に関する指定入院医療機関向け調査および厚生労働省向け調査の報告
日本精神神経学会 法委員会, 太田 順一郎1)◎, 磯村 大2), 一瀬 邦弘3), 伊藤 哲寛4), 岩尾 俊一郎5), 大下 顕6)○, 岡崎 伸郎7), 木村 一優8), 佐藤 忠彦9), 杉田 憲夫10), 高岡 健11), 津田 敏秀12), 富田 三樹生13)※, 中島 豊爾14), 中島 直13)○, 花輪 昭太郎15), 平田 豊明16), 福原 秀浩17), 星野 征光18), 松田 ひろし19)※※, 三國 雅彦20)※※, 三野 進21)※※, 吉岡 隆一22)○, 吉住 昭23)※※
1)岡山市こころの健康センター
2)地精会金杉クリニック
3)医療法人聖美会多摩中央病院
4)北見赤十字病院
5)兵庫県立光風病院
6)京都大学医学部附属病院
7)独立行政法人国立病院機構仙台医療センター
8)こころのクリニック石神井
9)桜ヶ丘記念病院
10)天外メンタルクリニック
11)岐阜大学医学部
12)岡山大学大学院環境生命科学研究科
13)多摩あおば病院
14)地方独立行政法人岡山県精神科医療センター
15)くまもと心療病院
16)千葉県精神科医療センター
17)医療法人微風会浜寺病院
18)星のクリニック
19)柏崎厚生病院
20)国際医療福祉大学病院
21)みのクリニック
22)公立豊岡病院
23)肥前精神医療センター臨床研究部
◎執筆者,○調査委員,※委員長,※※担当理事
精神神経学雑誌 116: 458-474, 2014
受理日:2014年3月1日

 医療観察法は,当初から施行5年後の国会報告が定められており,これに従って平成22年11月に報告がなされた.しかし,残念ながらこのときの国会報告は,医療観察法施行後5年間の同法の運用の実態を把握するためには不十分なものであった.このため,日本精神神経学会・法委員会は今回の国会報告では十分に明らかにされていない事項で,今後の医療観察法とその運用を検討する上で重要と思われる項目について調査を実施した.調査対象は,現在医療観察法による入院医療を担当している全国28ヵ所の指定入院医療機関(第1部)および厚生労働省(第2部)である.第1部の内容は,1)退院申立てに対する棄却決定,2)入院継続申立てに対する棄却決定,3)医療観察法による再入院,の3つの事項に関するものであった.アンケートの結果によれば,退院申立てに対する棄却決定16件中,入院医療機関側から見て「正当である」とされたものは2件に過ぎず,残りの14件のケースを精査することが,医療観察法における社会的入院の問題や,診断やリスク評価における齟齬の問題を明らかにする契機となると考えられた.医療観察法による再入院のうち入院を経た17件中,前回入院に何らかの誤りもしくは不足があったと回答しているケースは8件で,これらのケースについて前回入院中に提供された治療,および退院後に提供された治療と支援についての詳細を明らかにすることが重要と考えられた.厚生労働省に対する調査は,17項目の質問からなるものであったが,回答が得られたのは,1)検査および報告徴収など,2)処遇改善請求のあった79事例の請求内容,3)指定入院医療機関に入院中に他の医療施設へ転院した19事例の内容,の3項目のみであった.回答のあった3項目についても今回の調査だけではその内実は明らかにはなっておらず,今後これらの運用実態が開示されていくことが重要と考える.

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