Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第116巻第5号

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特集 認知症診療システムの構築と精神医学の貢献
認知症診療の枠組み
粟田 主一
東京都健康長寿医療センター研究所自立促進と介護予防研究チーム
精神神経学雑誌 116: 378-387, 2014

 認知症診療の枠組みについて,その具体的なあり方を検討するために,3つの調査研究を実施した.研究1:「認知症のための医療サービス調査票」を作成して,東京都内の一般診療所の認知症対応力を評価した.①認知症対応力向上研修の「受講医がいる診療所」は,「受講医がいない診療所」よりも,かかりつけ医機能,鑑別診断機能,周辺症状外来対応機能,在宅医療機能,地域連携機能が有意に高く,②「認知症サポート医がいる診療所」は,「受講医がいる診療所」よりも,上記の機能のすべてが有意に高い.しかし,③鑑別診断,周辺症状外来対応,地域連携のいずれについても,“通常の診療業務”としてこれを実践できる認知症サポート医は限られている.研究2:全国の認知症疾患医療センターを対象に活動状況を調査した.現在の認知症疾患医療センターは,①1989年に創設された老人性認知症疾患センターと比較して総じて良好な活動状況にあるが,活動水準の施設間格差は大きく,②担当圏域が広すぎるために求められる機能が十分に果たせないと感じている施設も多い.③一般病院に設置されている認知症疾患医療センターの多くが救急部門を受診する認知症患者の身体合併症医療を支援しているが,「基幹型」の指定は受けていない.④精神科病院に入院する認知症患者の入院期間は長期化する傾向がある.研究3:身近型認知症疾患医療センター候補医療機関の予備的調査を行ったところ,入院対応機能は弱いが,鑑別診断,周辺症状外来対応,地域連携については高い機能を発揮していることが可視化された.以上の結果から,以下の3つの提言を行った.(1)認知症サポート医は,その数を増やすということだけではなく,実際に認知症疾患の診断や周辺症状への対応能力をもち,地域包括支援センターと連携して,認知症の人の暮らしを支える地域包括ケアシステムの構築に積極的に関与する診療所として,その適正数の確保を目標とすべきである.(2)認知症疾患医療センターは,圏域の広さ・人口規模に応じて適正数を配置すべきである.また,市町村と連携し,認知症の人の暮らしを支える地域包括ケアシステム構築の推進役を担うべきである.救急医療機関における認知症支援体制の整備は,認知症疾患医療センター運営事業とは独立に進める必要がある.(3)認知症支援診療所(仮称)を,認知症疾患の診断,周辺症状の外来対応,地域連携の推進を担う医療資源として,市町村単位の認知症施策の中に位置づけていくことが重要である.

索引用語:かかりつけ医, サポート医, 認知症疾患医療センター, 地域包括支援センター, 地域包括ケアシステム>
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