Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第116巻第3号

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特集 東日本大震災からの復興に向けて―災害精神医学・医療の課題と展望―
災害救助要員のメンタルヘルス
高橋 晶
筑波大学医学医療系災害精神支援学
精神神経学雑誌 116: 224-230, 2014

 2011年3月11日に東日本大震災が発生し,広範囲で甚大な被害をもたらし,死者・行方不明者数は計2万人弱にのぼった.さらに,福島第一原子力発電所では放射性物質の放出を伴う重大事故が発生した.この大震災に対して,2011年5月21日に日本精神神経学会の声明が発表され,「災害精神支援学講座」を新設し,地域精神科医療の確保とこころのケアの長期的支援を実現し,その支援方法の妥当性の検証を行い,わが国の災害精神医学・医療を確保し,将来の大規模災害にも対応できる人材育成を推進するべきであると提言された.これに応えて当部門が2012年4月に新設された.被災者に対するメンタルヘルス支援は最優先の課題である.その一方,警察官,消防官,自衛官,医療従事者など,災害時に前線に立つ救援要員へのメンタルヘルスは従来等閑視されてきたといえよう.しかし,救援者が独自に抱える問題への対策を検討することは,より有意義な復興のためには欠かせないと考える.またボランティアも重要な災害救援要員である.善意から被災地に駆けつけたが,あまりの惨状を目の当たりにして,燃え尽きてしまうボランティアも存在し,専門職の救援者以上に,メンタルヘルスの配慮が必要な領域と考えている.災害救援要員を対象としたメンタルヘルス保持を重要な課題ととらえ,救援者のメンタルヘルスの必要性,惨事ストレスへの組織的対応,当部門での救援者支援の実例について報告した.救援者は事前に災害教育がないまま,現場に行き,傷ついて帰還することも少なくないため,事前の教育,啓発は重要な点であること,平時のネットワーク作りの重要性を述べた.世間から救援者は救援して当然であると考えられ,メンタルヘルスは自力でできてしかるべきであると考えられている風潮がある.しかし実際にはまだ不十分であることが多い.悲惨な状況で最大限の活動を実施している支援者に尊敬と感謝の気持ちをもち,被災者と同様に,救援者支援を行い,復興の一助になればと考えている.

索引用語:災害精神医学, メンタルヘルス, PTSD, 救援者支援, 惨事ストレス>
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