Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第116巻第3号

※会員以外の方で全文の閲覧をご希望される場合は、「電子書籍」にてご購入いただけます。
特集 東日本大震災からの復興に向けて―災害精神医学・医療の課題と展望―
災害後の精神疾患予防の取り組み
内田 知宏1), 松本 和紀1), 高橋 葉子1), 越道 理恵1), 佐久間 篤2), 桂 雅宏2), 佐藤 博俊2), 上田 一気2), 松岡 洋夫1)2)
1)東北大学大学院医学系研究科予防精神医学寄附講座
2)東北大学大学院医学系研究科精神神経学分野
精神神経学雑誌 116: 203-208, 2014

 東北大学精神医学教室は,東日本大震災の発災直後から,宮城県内の精神保健福祉・医療の領域において様々な形で支援活動を継続している.東北大学大学院予防精神医学寄附講座(予防講座)は,宮城県の寄附によって設立された講座であり,県内の精神保健福祉の底上げに向けて,精神疾患の予防と早期発見,早期支援にかかわる活動と研究を行うために2011年10月に設立された.当教室では,震災支援にかかわる活動を「東日本大震災メンタルヘルス支援プロジェクト(GEMSプロジェクト)」と名づけ,予防講座が中心となり,精神神経学分野や病院精神科に所属するスタッフと協力しながら活動を行っている.また,予防講座の重要な役割の1つは,みやぎ心のケアセンターとの連携であり,両者は緊密な連携のもとに活動している.予防講座では,直後期から急性期に現場で実際に支援活動やコーディネートを行った経験を活かして,精神保健領域,精神医療の領域における県内の被害や支援状況をまとめる作業を行っている.精神科病院を対象とした調査も実施しており,災害における精神医療への支援や役割について検討している.われわれが力を入れている領域の1つは,自治体,消防,病院,社会福祉協議会など,災害後に長期にわたって支援にあたる人々への支援である.各機関の人事担当者などと相談しながら,健康調査,相談,研修などの精神保健活動を行っている.また,中長期的に県内の心理社会支援の底上げを図るための人材育成にも力を入れており,県内の心理士を主な対象とした心理支援スキルアップ講座を開催し,内外の協力者の力を借りながら認知行動療法や災害支援に特化した心理支援方法であるSkills for Psychological Recoveryの普及に取り組んでいる.今後も,被災地にある精神医学教室として,予防講座を中心に被災地の支援を継続するとともに,精神疾患の予防に必要な精神保健と心理社会支援を強化するための研究と実践に取り組んでいく.

索引用語:東日本大震災, GEMSプロジェクト, 精神保健, 予防>
Advertisement

ページの先頭へ

Copyright © The Japanese Society of Psychiatry and Neurology