Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第116巻第2号

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特集 向精神薬の適正使用と副作用モニタリング
向精神薬の循環器系副作用モニタリング
百村 伸一
自治医科大学附属さいたま医療センター循環器科
精神神経学雑誌 116: 123-129, 2014

 向精神薬を含む各専門領域の治療薬によって様々な循環器系の副作用が起こりうることが知られているが,ここでは頻度が高く致死的になりうる合併症として心筋炎・心筋症,QT延長症候群に焦点をあてる.心筋炎は心筋を主座とする炎症性疾患であり,しばしば心膜まで炎症が及び,その場合は心膜心筋炎と呼ばれる.ウイルスをはじめとして様々な原因で起こりうるが薬剤もしばしば心筋炎の原因となる.その結果心機能が低下すると呼吸困難などの急性心不全症状を呈し,最重症の劇症型心筋炎ではショックに至ることもある.薬剤性心筋炎の治療としては原因として疑われる薬剤の中止が原則であるが,心機能低下例に対しては強心薬静脈内投与,さらに重症の場合は上記に加えて補助循環が一時的に必要となることもある.薬剤誘発性の心筋症については主に拡張型心筋症の病態,つまり左室の拡張と収縮機能の低下が前面に立つ.血液系腫瘍にたいして用いられるアントラサイクリン系薬剤がとくに薬剤性心筋症を引き起こすことがよく知られているが向精神薬でも報告がある.次にQT延長症候群も様々な薬剤によって誘発されることが知られている.QT延長症候群は心電図上のQT時間が延長するみならず,その結果誘発される心室性不整脈,とくにTorsade de pointes型の心室頻拍が時に致死的となることが問題である.これらの重篤な循環器系合併症を起こす可能性のある薬剤を投与する際には,開始前および開始後も定期的に心電図検査を施行し,心症状の問診を行い,心電図異常が新たに出現した場合には速やかに循環器医にコンサルトをし,さらなる循環器系の評価を行うことが望まれる.

索引用語:心筋炎, 心筋症, QT延長症候群, モニタリング>
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