Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第116巻第2号

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特集 向精神薬の適正使用と副作用モニタリング
向精神薬の副作用モニタリング―クロザピンをモデルとして―
久住 一郎
北海道大学大学院医学研究科精神医学分野
精神神経学雑誌 116: 116-122, 2014

 クロザピンは,治療抵抗性統合失調症治療薬として世界中で使用されているが,無顆粒球症や心筋症・心筋炎などの重篤な副作用が発現する可能性があるため,そのリスクを最小限にし,有用性を最大限に発揮させる必要がある.海外では無顆粒球症の予防または早期発見のために白血球数・好中球数モニタリングが必須とされている.わが国では,これに糖尿病発現予防のための定期的な血糖値測定を加えた,独自のクロザリル患者モニタリングサービス(CPMS)に準拠してクロザピンを使用することが義務づけられている.上記副作用の他にも,クロザピンは便秘・麻痺性イレウス,けいれん発作,起立性低血圧・失神,流涎,嚥下性肺炎,過鎮静など多彩な随伴症状を伴う.これらの副作用が重篤化するのを防ぐためには,CPMSに定められた項目以外のモニタリングも日常臨床の中できちんと実施することが重要である.本稿では,クロザピンを1つのモデルとして向精神薬の副作用モニタリングのあり方について考察した.向精神薬の種類によって多少項目は変わるが,薬剤血中濃度,一般血・生化学所見,心電図,脳波,胸・腹部X線撮影,体重,体温・脈拍・血圧などの検査を定期的に行うことは,副作用の早期発見や重篤化を予防する上で重要である.しかし,それらの検査がどのくらいの頻度で最小限必要であるかのコンセンサスは,一部の項目を除いて得られておらず,今後の検討が必要である.われわれ精神科医は,単に精神症状を多次元的に捉えるだけではなく,身体症状にももっと関心を示す必要がある.精神症状と身体症状をバランスよく診ることによって初めて人間を丸ごと診療していく精神科医としての本領が発揮されると考えられる.

索引用語:クロザピン, 無顆粒球症, モニタリング, 糖尿病, 副作用>
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