Advertisement第123回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第128巻第9号

特集 てんかん診療実践の現在―最新用語改訂から薬物治療・外科治療の実際まで―
てんかん・てんかん発作型・てんかん症候群に関する国際分類・定義・用語update
日暮 憲道
武蔵小杉小児科・てんかんクリニック
精神神経学雑誌 128: 711-721, 2026
https://doi.org/10.57369/pnj.26-111
受付日:2025年11月30日
受理日:2026年5月13日

 てんかんは多様な臨床像を包含する神経疾患であり,その診断・治療・医学管理を適切に行っていくには,統一化された分類体系の理解が不可欠である.分類はまた,医療従事者間で患者情報を正しく共有するための情報伝達ツールとしての機能も重要である.そのため,使用される分類体系が現在の医学的理解や診療のニーズに対応しうるものでない場合,診療の質への悪影響は避けられない.てんかんの分類はこれまで,1981年のてんかん発作型分類および1989年のてんかん・てんかん症候群分類といった旧来の体系が長年にわたり利用されてきたが,これらは近年の知見を十分に反映しておらず,臨床現場にさまざまな不整合を生じさせていた.この課題に対応すべく,国際抗てんかん連盟(ILAE)は2017年以降,分類・定義・用語の体系的な再構築を進めており,とりわけ2017年に公表されたてんかんの全体的分類体系とてんかん発作型分類,ならびに2022年のてんかん症候群に関する分類と定義は,現在のてんかん診療を支える重要な基盤となっている.これらは範囲が広範であり,すべてを把握することは容易ではないものの,その基本的枠組みを理解しておくことはてんかん診療に携わる医師にとっての重要な課題である.本稿では現在のILAEによる主要な分類および定義について,その基本的概要と意義を概説した.

<索引用語:国際抗てんかん連盟, てんかん発作型, てんかん症候群, 分類>

はじめに
 国際抗てんかん連盟(International League Against Epilepsy:ILAE)は近年,てんかんに関連する分類や用語,その定義など,国際的に統一した枠組みに関する改訂や整理を積極的に行っている.その皮切りとなったのが2017年に発表されたてんかんやてんかん発作型に関する分類である3)4)10).それ以前の公式分類が1981年のてんかん発作型7),1989年のてんかん・てんかん症候群に関する分類8)であったことから,実に30~40年ぶりの改訂となった.その後,2017年の分類や用語改訂をベースとし,2022年にてんかん症候群に関する分類と定義が発表された5)9)11-14).てんかん症候群に関しては,1989年分類にも簡単な記載はあるものの,てんかん症候群に関する国際的な定義や分類,診断基準など詳細にまとめられたのは2022年がはじめてとなった.その内容については,総論2編,各論4編(発症年齢ごとに3編,特発性全般てんかんで1編)に及ぶ膨大な内容であるが,各症候群の知見の整理にとどまらず,てんかんという疾患の全体像を理解するうえでもきわめて重要かつ有用なリファレンスとなっている.さらに2025年には,2017年のてんかん発作型分類のマイナーアップデートが発表された1).このようなさかんな改訂の背景には,現在のてんかんに関する医学的・科学的理解の深まりや治療の進歩に対応可能な分類が必要であるとともに,てんかんに関する国際的な共通認識を高め,医療環境によらず利用可能な分類を作成すること,さらには,てんかんの非専門の医療従事者,患者・家族を含む非医療者にも理解しやすい用語とすること,といった目的が重視されている.てんかんに関する分類は,てんかん診断や医学管理の決定,今後の見通しの検討などを行ううえで必要不可欠なものであり,てんかん診療にかかわる医療従事者は現行の分類の概要を理解しておくことが望ましい.
 本稿では,2017年てんかん分類とてんかん発作型分類,2022年のてんかん症候群分類・定義に関し,すべてを記載することは不可能であるが,要点についていくつか解説する.なお,2025年発作型アップデートについては,公開されて間もないことと,いまだ診療現場に浸透していないため,本稿では簡単に要点のみ紹介するにとどめる.

I.2017年てんかん分類の全体像10)
1.てんかん分類の意義
 てんかんは長期(通常は年単位以上)に「てんかん発作(以下,発作)」を反復する,あるいはそのリスクのある大脳の慢性疾患である.単一疾患ではなく,病因,焦点領域やネットワーク,症状,適した治療,予後が患者によって大きく異なり,また,年齢によっても疾患特性は大きく変化する.正常な大脳・身体機能,生活にも影響を及ぼすことで,発作のみならず,さまざまな併存症も問題となるため,てんかん診療現場では包括的な評価,対応が不可欠である.このような評価における国際的な基本指標がILAEの作成した「分類」である.分類は診断の指標,診療の目安,患者の臨床的状態に関する情報伝達ツールの役割をもつ一方,分類(診断)のみで詳細を反映することは不可能であり,年齢や経過とともに変化しうることを理解する必要がある.

2.てんかん分類における5つの評価指標
 てんかん発作型,てんかん病型,てんかん症候群,病因,併存症の5つについて評価することが示されている(図1).これらを適切に評価し対応していくことがより良い診療を実現するうえで不可欠であるが,診療初期に横断的に評価するだけでなく,経過とともに縦断的に評価を繰り返し,分類や診療方針を適宜見直していくことが重要である.
1)てんかん発作型
 発作の評価は,てんかん診断の起点となる.言うまでもないが,前提として発作様症状がてんかん発作であるか,それ以外の現象かの判断は必須である.あらゆる発作は(i)一側の大脳半球内に分布する神経ネットワークに発生する「焦点起始発作」,(ii)両側半球に分布するネットワークに発生する「全般起始発作」のいずれかに該当する.「起始」は,発作の始まりのネットワークによって規定されることを表現するための用語であるが,実用上はこれを略し「焦点発作」「全般発作」と呼称して問題はない.これらを決定するための情報が不足し,正確な分類が困難な場合には,「起始不明発作」と診断する.これは可能性や印象のみで診断することによる誤診を予防し,今後,追加評価を要する段階であることを示すための実用上の分類である.したがって,情報が集まった時点で焦点・全般発作のいずれかへ再分類する.
2)てんかん病型
 発作型は「臨床現象」に関する分類であるのに対し,てんかん病型は「疾患」に関する分類である.(i)全般発作のみを示す場合は「全般てんかん」,(ii)焦点発作のみを示す場合は「焦点てんかん」,(iii)両発作型を有する場合は「全般焦点合併てんかん」となる.(iii)について,1989年分類では全般か焦点か決定できないという観点から「未決定てんかん」とも呼ばれていたが,現在は両方の発作を有するてんかんの存在が十分に認知された.さらに発作型と同様,情報不足により病型が分類できない場合には「病型不明てんかん」と診断し,後に可能となった段階で(i)~(iii)のいずれかへ再分類する.
3)てんかん症候群
 発症年齢,発作型やその症状,脳波所見,病因や病型,治療反応性,予後など,複数の臨床的特徴を共有する患者が多く存在する場合,てんかん症候群として確立されうる.てんかん症候群診断が可能な患者は全体からは限られるが,診断可能な場合,治療方針や予後予測などの観点からも臨床的意義が大きい.詳細については後述する.
4)病因
 てんかんの原因に関する分類である.1989年の病因に関する分類項目は,症候性(何らかの明確な原因があるてんかん),特発性(明確な原因は不明だが,主に体質要素によるてんかん),潜因性(症候性要因があると推定されるが明確ではないてんかん),という曖昧なものであったが,臨床的・科学的理解が進んだことで,2017年ではより具体的な内容へと大きく改訂された.(i)素因性(遺伝子・染色体異常含め体質素因に起因),(ii)構造的(脳の構造異常に起因),(iii)代謝性(代謝異常に起因),(iv)免疫性(脳神経に対する自己免疫機序に起因),(v)感染性(脳感染症に起因),(vi)病因不明,の6カテゴリーが示された.当然,病因はカテゴリーへの分類のみではなく,より明確に特定・診断することが重要であるが,これらの分類は病因検索の目安としても有用なものとなっている.以前の「特発性」は「素因性」に含まれるが,イコールではないことに留意する.ただし,結節性硬化症では構造的+素因性病因,進行性ミオクローヌスてんかんでは代謝性+素因性,のように,しばしば複数のカテゴリーにまたがる場合も多いが,目的に応じて使い分ければよい.
5)併存症
 てんかんの併存症は幅広く,しばしば生活の質に強く影響する.したがって,実臨床では発作のみならず,患者の生活を含めて包括的に評価,対応していくことが欠かせない.併存症の発生要因には,発作に伴う身体的危険性(外傷,事故,溺水,脱臼など),心理・精神的影響(スティグマ,不安,恐怖,うつ,強迫性症状,統合失調症など),原疾患やてんかん病態による影響(認知・行動障害,発達の遅れ,神経学的退行など),治療の副作用や合併症,社会生活の制限(学校,就労,自動車運転,妊娠出産など)など,さまざまなものがある.治療困難な原疾患による直接的負担など,回避の困難な併存症もあるが,教育や環境調整,先回りした対応などで軽減や回避が可能なものも多い.例として,小児の場合には神経発達症がしばしば問題となり,対応の遅れが二次障害の原因ともなるため,早期から認知・行動・発達特性の評価,集団への適応や学習理解状況の確認,心理的ケア,家族・学校・職場教育や合理的配慮などが重要となる.理解可能な年齢の患者では,疾患に関する正しい教育も欠かせない.後述するが,発作やてんかん様脳波活動による脳機能への影響を「てんかん性脳症」と呼び,認知・行動・精神機能を含め種々の負担が生じうるが,てんかん病態に関する先回りした評価と治療によって,軽減や予防が可能な場合があり,この概念を念頭におくことは重要である.てんかん関連突然死も重篤な併存症であるが,リスク軽減に強直間代発作の抑制,家族教育の重要性が報告されている.

図1画像拡大

II.2017年てんかん発作型分類
 発作型はてんかん診断の律速段階であり,治療選択の基盤となるきわめて重要な部分である.ただし,分類のみで詳細を反映することはできないため,症状の時間的経過を含めた発作の詳細について記載しておくことが重要である.

1.基本版と拡張版(図2)
 2017年発作型分類では基本版と拡張版の2つの体系が示されている.前者は基本要素が示され,一般・救急含む非専門での利用を,後者はさらに発作症候による細かい分類がなされ,専門診療での利用が想定されるが,目的に応じて使い分ければよい.

2.分類手順
1)起始分類
 発作型の基盤となる分類で焦点起始発作か全般起始発作かを決定する(前述).判断に際し代表的な発作症候は理解しておくことが必要であり,起始から時間経過とともに症状の変遷を問診にて確認する.ただし,正確な判断は最初の時点では困難なことも多いため,この段階では起始不明発作としておき,脳波・画像検査,次回以降の発作に関する情報など,追加情報を得て判断する.
2)意識保持・意識減損の分類
 意識は生活安全上の観点から重要であるため,焦点発作の場合に限り可能なら意識に関する分類を行う(全般発作では多少とも意識減損を伴うと考えられるため不要).発作の起始から終了まで意識清明が保持される場合は焦点意識保持発作(focal aware seizure:FAS),一部でも意識減損がみられる場合は焦点意識減損発作(focal impaired awareness seizure:FIAS)となる.意識は発作中に患者が自身と周囲の状況を理解(awareness)していたかどうかで判断するが,判定困難な場合は無理に記載する必要はない.
3)運動・非運動の分類
 運動症状を呈するか否かにより分類する.焦点・全般・起始不明いずれにも該当する分類である.ただし,焦点発作ではさまざまな症状が複合的に,経時的に変化しながら出現するため,発作で最初に明確に出現した症状が運動症状か非運動症状かにより,焦点運動起始発作,あるいは焦点非運動起始発作に分類する(「起始」という用語は省略しても構わない).これは発作焦点との解剖学的・機能的関連で重要と考えられるためである.全般発作の場合は症状がより定型的であるため起始に限定する必要はなく,全般運動発作,あるいは全般非運動発作に分類される.なお,基本版では,次項の強直間代発作を除き,運動・非運動分類までであるが,拡張版では重要な発作症候についてさらに細分類が可能である(例:焦点強直発作,焦点自律神経発作など).
4)強直間代発作
 運動・非運動の分類より詳細な発作型は拡張版での分類となるが,強直間代発作は臨床的に重要なため基本版でも特定されている.全般では全般強直間代発作(generalized tonic—clonic seizure:GTCS),起始不明では起始不明強直間代発作(unknown—onset tonic clonic seizure:UTCS)となる.焦点の場合は焦点起始両側強直間代発作(focal to bilateral tonic—clonic seizure:FBTCS)となるが,これは前述の下位分類とは観点が異なり,進展様式により定義されたものである.つまり,片側大脳内に焦点起始後,両側に広がり(両側化),強直間代発作に至るもので,言うまでもなく臨床的にきわめて重要な発作である.右手の運動症状で始まり全身の強直間代発作に至った場合,FBTCSでもあり,焦点運動起始発作(意識の要素も入れれば焦点意識減損運動起始発作)でもある.

3.焦点起始発作はどこまで詳細に分類すべきか
 2017年発作型分類が,特に焦点発作での運動・非運動起始の分類ルールが煩雑かつ実臨床での有用性に乏しいことから,2025年の小改訂では,この部分が発作型(classifier)ではなく記述子(descriptor)となっている(後述).つまり,発作型としては意識分類までである.実際,2017年分類でも焦点発作はFAS,FIASの記載+詳細な症状の記載とすることが多いことから,あまり細かい分類ルールに振り回される必要はなく,診療の目的に応じて記載すればよいと考えられる.

図2画像拡大

III.2022年てんかん症候群の分類と定義の要点
1.てんかん症候群の定義と診断する意義について
 てんかん症候群の定義は,「臨床症状や脳波所見の特徴的な集合体であり,しばしば特定の病因(構造的,素因性,代謝性,免疫性,感染性)により裏付けられるもの」とされている.つまり,これまでと同様,てんかん症候群は脳波や発作症状の特徴(脳波・臨床症候群と呼ばれる概念)によって成立することに変わりはないが,近年の医学的進歩とともに,病因という科学的要素が疾患概念に盛り込まれてきたことは重要な変化である.また,症候群を診断する意義については「しばしば予後や治療に関する示唆を与える」もの,症候群の特性については「多くは特定の年齢帯で発症し,年齢依存的な臨床像とさまざまな特有の併存症を示す」と説明されている.症候群は,他の項目の分類・診断と比較して,診断自体に含まれる情報量が圧倒的に多いため,全例が診断できるわけではないが,診断可能な場合にはその臨床的意義は大きい.一方,症候群非該当症例であっても,脳波臨床的に近縁の症候群を参考に治療や経過予測を考えることが大切であり,てんかん診療に携わる医師にとって症候群を知っておくことの有益性は大きい.

2.症候群を特徴づける分類要素
 前述の通り,症候群を形成する根幹はあくまで「脳波・臨床症候群」であるが,それぞれが発症年齢,病型,病因,重症度,併存症,発作や神経学的予後といった多面的要素により特徴づけられている(表).2010年案では発症年齢による分類を基軸としていたが2),2022年も発症年齢により「新生児・乳児期(2歳未満)」14)「小児期(2~12歳)」11)「様々な年齢(18歳以下の小児齢と19歳以上の成人齢)」9)の3つのカテゴリーに分けられた.発表論文も年齢ごとに分けられ,それぞれ該当する症候群が解説されている.ただし,患者数が多く脳波臨床的に多くの特徴を共有する「特発性全般てんかん」(後述)については独立した論文でまとめられている5).さらに2022年分類では,発症年齢以外の多彩な要素によってグループ化して示すことで,各発症年齢帯でのてんかんの特性や,疾患同士の位置関係が把握しやすく示されている.発作予後や疾患重症度の観点からは「自然終息性てんかん」「発達性てんかん性脳症(発達性脳症あるいはてんかん性脳症)」「進行性神経学的退行」で示された(後述).また,特定の確立された病因に起因し,臨床的に区別・認識可能な脳波臨床的特徴を示す状態を指す「病因特異的症候群」の概念が新たに提唱された.このように,症候群をグループ化する概念の導入は,経過・予後予測や医学的介入の緊急度の判断,より早期の適切な治療選択など,患者管理において多くの点で大変重要である.
1)自然終息性てんかん
 特定の年齢で発症した後,疾患感受性の高い年齢を過ぎると自然寛解を示す症候群である.以前はしばしば,「良性」てんかんと呼ばれることがあったが,認知機能などにおける併存症が稀ではなく,一部に病態悪化を示す場合もあり,医学用語として曖昧で不適切と考えられた.このため,2017年の用語改訂では,「良性」は使用せず,正確に特性を表現する「自然終息性」や「薬剤反応性」を用いることが推奨された10).
2)発達性(あるいは)てんかん性脳症を呈する症候群
 「てんかん性脳症(epileptic encephalopathy:EE)」は,顕著なてんかん様脳波活動(発作時,発作間欠時)によって発達や健常な脳機能が障害される状態を示す.一方,この用語では原疾患の病態自体に起因する発達への影響を表現できていないことから,2017年にこれを「発達性脳症(developmental encephalopathy:DE)」という用語で表現し,あわせて「発達性てんかん性脳症(developmental and epileptic encephalopathy:DEE)」と称することが推奨された.2022年分類ではDEEとともに,いずれかの要素のみを伴う場合はDE,EEと単独で記載し,使い分けている.
3)進行性神経学的退行を呈する症候群
 前述の通り,すでに長期に発達を遂げた認知などの脳機能が,疾患の発症によって進行性に障害される状況を示す新用語である.
4)特発性全般てんかん(idiopathic generalized epilepsy:IGE)
 2017年病因分類では,前述の通り「特発性」を廃止し,「素因性」が採用された(ただし,これらは同等ではない).しかし,小児欠神てんかん・若年欠神てんかん・若年ミオクロニーてんかん・全般強直間代発作のみを示すてんかん,の4つの症候群のみ,本来であれば素因性全般てんかん(genetic generalized epilepsy:GGE)となるが,IGEと呼んでよいこととなった.IGEは臨床家に馴染み深い用語となっており,診断,適切な治療選択,予後予測,研究等において,他のGGEと区別できる利点が大きいこと,基本的には多遺伝子性・多因子性遺伝形式で特定の単一遺伝子の関与はきわめて稀であることからも「特発性」が妥当と考えられたことが背景にある.IGEに含まれない他のGGEには乳児ミオクロニーてんかん,ミオクロニー欠神てんかん,眼瞼ミオクロニーてんかん,ミオクロニー脱力発作を伴うてんかんなどがある.

3.症候群名の改定(表)
 今回採用された各症候群の詳細については本稿では割愛するが,症候群名は2017年以降の用語を標準とし,人名ではなく疾患特性を明確に表現する説明的な疾患名へ改定された.これによって,これまで馴染み深かった疾患名が変わり,例えばWest症候群は「乳児てんかん性スパズム症候群」へ包含され,また,大田原症候群は早期ミオクロニー脳症と合わせて「早期乳児発達性てんかん性脳症」へ改定されるなど,種々の病名改定がなされた.ただし,Dravet症候群,Lennox—Gastaut症候群など,一部は人名のまま維持された.

表画像拡大

IV.2025年発作型小改定の骨子
 2017年の発作型分類改訂は,一定の有用性が評価された一方,意識評価の問題(awarenessのみで判定,awarenessの適切な訳が困難な言語が複数存在)や,焦点発作における運動・非運動起始(拡張版ではさらに詳細な起始症候)による下位分類の臨床的意義の疑義など,複数の問題点が指摘された.これに対し,2025年に以下の改訂が発表された.(i)発作型名称における「起始」を削除(全般起始発作でも焦点起始であることが近年明らかにされつつあり誤解が生ずるため),(ii)発作型分類において,医学管理に直接的に影響する要素を分類子(classifier),重要だが間接的に影響する特徴を記述子(descriptor)と規定し,(iii)焦点発作においては意識までは発作型,運動・非運動起始分類は記述子とし,生物学的な発作型からは除外した.その結果,発作型の記述子として,基本版で「観察可能な症候を伴う/伴わない」で分類し,拡張版では「症候を時系列で記述」すると規定された.また,(iv)意識をawarenessではなくconsciousnessの表現に戻し,awarenessと反応性(responsiveness)とで評価することと規定された.その他いくつか変更がなされているが,詳細はILAEのホームページを参照されたい6).

V.分類の実際
 ここでは架空2例提示し,実際の分類手順について紹介する.

 症例1)28歳女性.幼少期に熱性けいれんが長く続いて入院した既往あり.胃のこみ上げ感を感じた後,急に呼びかけに反応しなくなり,倒れたりはしないが,視線は合わず,口を軽くペチャペチャさせる様子あり.1~2分で徐々に返答はできるようになったものの,自宅にいるのにここがどこなのか,夫が誰なのかが理解できない混乱した様子が数分続いたが,徐々に回復.その後眠気を訴え,15分ほど眠って回復したときは会話や見当識に異常はなく,本人も何があったのか覚えていない様子であった.後日外来受診し,問診では3ヵ月前にも同様の症状があったとのことであった.

 →この時点で症状からは特徴的な焦点発作症候を呈していることから,発作型は「焦点意識減損発作」であり,すでに発作を反復しているためてんかんと診断され,その病型は「焦点てんかん」となる.

 →その後,病因検索のため頭部MRIを実施して左海馬硬化を認めた場合,病因は「構造的(海馬硬化症)」であり,症候群として「海馬硬化を伴う内側側頭葉てんかん」と診断することが可能となる.ここまで診断できれば,抗てんかん発作薬を使用し,薬剤抵抗性であれば積極的に外科的治療(内側側頭葉切除など)が考慮される状態と判断される.一方,構造異常を認めなかった場合は,「病因不明」となり,症候群は非該当となる.

 症例2)16歳男子.試験勉強で夜ふかしした翌朝,自室からガタガタ音がしたため母親が様子を見に行くと,床で体を反らせ全身を硬直させ,白目の状態で四肢をガクガクさせている状態を発見した.症状はそこから30秒程度で終了し,その後救急要請し病院受診した.受診時はすでに意識清明で,頭痛・嘔気と全身の筋痛は訴えていたが,特に会話なども問題はなかった.問診では本人は早朝に一度トイレに行ってベッドまで戻ってきた記憶はあるが,その後は覚えておらず,気づいたのは救急車内であったとのこと.また,これまでにけいれんなど起こした既往はなかった.

 →この時点で,発作がどのように始まったかに関する情報はないため,発作型は「起始不明強直間代発作」で,今回初回発作であったため,てんかんとは診断できない状態である.臨床的には発作を起こす急性症候性要因がないかの確認が必要である.

 →後日脳波を行ったところ全般性棘徐波複合が確認された.また,再度問診にて情報収集したところ,半年ほど前から特に寝不足の朝などによくビクッとして物を落とすことなどがあることが明らかとなった.この場合,発作型は「全般強直間代発作」「全般ミオクロニー発作」で,てんかん診断が可能となり,病型は「全般てんかん」,さらに症候群にも該当し,「若年ミオクロニーてんかん」と診断された.この症候群は特発性全般てんかんの1つで,病因分類は「素因性」となる.本疾患は多くの例で抗てんかん発作薬の反応性は高いが,投薬を中止することで再発頻度も高いことが知られている.このため,長期内服を前提に投薬治療を開始することが必要となる.

おわりに
 2017年てんかん分類・発作型分類,および2022年てんかん症候群分類の要点を概説した.すべての用語と分類を完全に使い分けることは容易ではないが,その根底にある「考え方」を理解することは,質の高いてんかん診療を行うために不可欠である.特に症候群や病因の診断は,治療方針や予後を大きく左右する重要情報となる.2022年のてんかん症候群分類は内容こそ膨大だが,てんかんそのものを深く理解するためにきわめて価値の高いリファレンスとなるため,ぜひ一読することを薦めたい.

 編  注: 本特集は第121回日本精神神経学会学術総会シンポジウムをもとに曾根大地(東京慈恵会医科大学精神医学講座)を代表として企画された.

 なお,本論文に関連して開示すべき利益相反はない.

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