Advertisement第122回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第128巻第4号

特集 精神・神経臨床における脳核医学画像―臨床の基本から最新の進歩まで―
アルツハイマー病診断におけるアミロイドPETの有用性
松田 博史
福島県立医科大学生体機能イメージング講座
精神神経学雑誌 128: 230-236, 2026
https://doi.org/10.57369/pnj.26-041
受付日:2025年2月18日
受理日:2025年6月12日

 多施設共同研究により,アミロイドPET検査なしではアルツハイマー病の早期診断は容易でないことが判明した.アルツハイマー病に対する抗アミロイドβ抗体薬治療の保険収載に伴い,アミロイドPET用の3薬剤も保険収載されたことから,数多くのアミロイドPETが施行されている.アミロイドPETは陽性,陰性を視覚的に判定する.陰性では,白質に非特異的な集積が認められる.陽性判定で注目する部位としては,灰白質である後部帯状回から楔前部,内側前頭前野,側頭葉皮質,頭頂葉皮質,線条体などである.ただし,少量のアミロイド蓄積の判定は迷うことも多く,視覚判定を補う目的で定量測定も行われている.用いる薬剤の違いによらない定量値として,アミロイド蓄積を100段階で表すセンチロイドスケールが用いられている.センチロイドスケール算出の標準的な手法は,アミロイドPETと同時期に撮像された3次元T1強調画像を用いて解剖学的標準化を行う方法であり,そのための解析ソフトウェアが開発されている.一方で,アルツハイマー病のステージングにはタウPETが有用であり,実臨床への応用が期待されている.

索引用語:アルツハイマー病, アミロイドPET, センチロイドスケール, タウPET>

はじめに
 認知症の原因疾患として最も多くみられるアルツハイマー病とは,老人斑と神経原線維変化という2つの病態生理が神経細胞死を引き起こすことで脳が萎縮する疾患である.家族性アルツハイマー病では老人斑の主要構成成分であるアミロイドβ蛋白の産生が増加する.一方,アルツハイマー病の約99%を占める孤発性アルツハイマー病ではアミロイドβ蛋白の産生は増加しないものの,そのクリアランス機構が破綻する.その結果,脳内のアミロイドβ蛋白濃度が徐々に増加することでタウ蛋白のリン酸化を惹起し神経細胞が脱落することにより認知症をきたすと考えられている4)
 アルツハイマー病の診断は,本人や家族からの問診,神経心理学的検査,血液生化学検査,ならびに神経学的診察などを行い,CTやMRI,脳血流SPECTといった補助的な画像診断を行うことが一般的である.ただし,早期診断は必ずしも容易ではない.脳血流SPECTやMRIでアルツハイマー病に特徴的といわれている所見は他疾患でもみられることがある一方で,早期にはこのような特徴的所見がみられないことも多い(図1a, b14).そこで近年,臨床症状に加え,ATN分類6)というアルツハイマー病のバイオマーカーによる診断が提唱されている.アミロイド(A),タウ(T),神経変性(N)を標的とした画像診断では,Positron Emission Tomography(PET)やMRIが用いられる.この診断ではNの有無にかかわらずAとTが陽性であればアルツハイマー病となる.また,最近,保険収載されたアルツハイマー病に対する抗アミロイドβ抗体薬治療の適応にはアミロイド陽性が必須である.アミロイド陽性判定には,抗アミロイドβ抗体薬と同時に保険収載されたアミロイドPETまたは脳脊髄液検査が用いられる.アミロイドPET検査は脳脊髄液検査に比べて高額であるが,非侵襲的であり,アルツハイマー病に特徴的なアミロイド蓄積部位とその部位における蓄積量を評価できる利点を有する().抗アミロイドβ抗体薬治療投与1年後の効果判定ではアミロイドPETによる判定が推奨されており,アミロイド陰性化が達成されていれば抗体薬投与を完了することができる19).アミロイドPET用薬剤としては,18F-florbetapir(アミヴィッド),18F-flutemetamol(ビザミル),18F-florbetaben(ニューラセク)が保険適用となっている.

図1画像拡大
画像拡大

I.アミロイドPETの多施設共同研究
 アミロイド陽性はアルツハイマー病以外の疾患や,認知機能正常の高齢者でもみられるものの,アミロイド陰性であればアルツハイマー病をほぼ否定できる.アミロイドPETなしでアルツハイマー病の臨床診断がなされてきた実臨床において,アミロイドPETがどのようなインパクトを与えるかについて以下の2つの多施設共同研究が本邦で行われた.
18F-flutemetamolを用いた研究12)では全国7施設から,認知機能低下がみられアルツハイマー病が疑われた93名の患者が登録された.認知機能スケールであるMini-Mental State Examination(MMSE)スコアは21.2±5.0(30点満点)であった.アミロイドPETが施行される前の臨床診断は,アルツハイマー病の可能性が非常に高い(19例),アルツハイマー病の可能性が高い(55例),アルツハイマー病の可能性が中等度(15例),アルツハイマー病の可能性が低い(4例),アルツハイマー病の可能性が非常に低い(0例)に分類された.これらの症例でのアミロイドPETの陽性率は,アルツハイマー病の可能性が非常に高い群で79%,アルツハイマー病の可能性が高い群で60%,アルツハイマー病の可能性が中等度の群で75%,アルツハイマー病の可能性が低い群で75%であった.アルツハイマー病の可能性が非常に高い群でも21%はアミロイドPET陰性であったことから,実臨床でのアルツハイマー病診断の困難さが明確となった.
18F-florbetapirを用いた研究14)では,全国5施設から認知機能低下がみられアルツハイマー病が疑われた99名の患者が登録された.MMSEスコアは24.6±3.2であり18F-flutemetamolを用いた研究よりも認知機能低下が軽度の患者が登録され,アルツハイマー病診断の確診度が15%から85%の間で評価された.アミロイドPET前に診断確診度が50%以上の54例でのアミロイドPET陽性率は52%であった.一方で,アミロイドPET前に診断確診度が50%未満の45例でのアミロイドPET陽性率は44%であった.アミロイドPETにより全体で39%の症例で臨床診断に変更がみられ,特にアミロイドPET施行前にアルツハイマー病と診断された48%の症例が非アルツハイマー病へと診断が変更された.これらのことからも,より早期になるほどアルツハイマー病診断は難しくなることがわかる.また,アミロイドPETは42%の症例で患者管理の変更をもたらし,特に薬剤とケアプランで顕著であった.

II.アミロイドPETの読影
 アミロイドPETの陽性および陰性判定は視覚読影が原則である.アミロイドPET薬剤は脳の白質構造に非特異的に集積することから,陰性例では白質への集積を示す画像となる15).MRIから抽出した白質画像をPETの分解能に相当する画像に変換すると,アミロイドPETの陰性画像に類似することからもわかる(図2a).陽性例では大脳皮質への集積がみられ,白質への集積と大脳皮質や線条体の灰白質への集積が合わさった画像となる(図2b).陽性例においても,小脳皮質と海馬は低い集積を示す.孤発性アルツハイマー病で最初に集積がみられる大脳皮質は,後部帯状回から楔前部,および内側前頭前野である.その後,側頭葉皮質から頭頂葉皮質に広がっていく15).進行すると線条体の前腹側部にも集積がみられるようになる.一方で家族性アルツハイマー病では,線条体全体に高い集積がみられる9)
 アルツハイマー病とは異なり,加齢に伴う軽度の集積が側頭葉にみられるとの報告3)がある.また,脳アミロイドアンギオパチーでも集積がみられ,脳アミロイドアンギオパチー関連炎症では集積が低下するとの報告もみられる1)

図2画像拡大

III.アミロイドPETの定量
 本邦においてアミロイドPETの読影は,日本核医学会の主催するアミロイドPET読影講習の修了者により行われている.しかし,18F標識アミロイドPETの読影者間の一致度は講習修了者間でもそれほど高いとはいえず,κ係数で0.7~0.8である12)14).特に,アミロイド集積が少ない場合には一致度が低くなる.アミロイドPETに関して読影医は,曖昧な結果を出すわけにはいかず判断に迷うことになる.この曖昧さを補う目的で,アミロイドPETの定量評価が行われている.簡便な定量法としては特異的集積部位と非特異的集積部位の集積比であるStandardized Uptake Value Ratio(SUVR)が用いられる.非特異的集積部位としては,小脳皮質,小脳全体,小脳全体と脳幹,および橋などが用いられている.しかし,SUVRは使用するアミロイドPET薬剤の違いや選択する非特異的集積部位の違いにより変動する欠点を有する.この変動を抑える目的で,アミロイド蓄積を100段階で表すセンチロイドスケール10)が世界標準の定量値となっている.センチロイドスケールは,11C-PiBを用いたアミロイドPETにおいて,50歳以下の若年健常者のアミロイド陰性群で得られた集積を0,高齢のアルツハイマー病患者群で得られた集積を100とするものである.同一患者に11C-PiBと18F標識アミロイドPETを行い両方の集積量の直線比例関係を求め,18F標識アミロイドPETでの集積量をセンチロイドスケールに換算することができる.アミロイド陽性と陰性のセンチロイドスケールのカットオフ値として定まった値はないが,20前後とする研究が多い8).また,生前のアミロイドPETと死後の病理を比較した研究では12以上はアミロイドβ蛋白の蓄積がみられるとの報告がある11).センチロイドスケールが12から30の間は,病理学的にアミロイドβ蛋白の存在が確認されるもののアミロイドPETの視覚評価は曖昧になるグレーゾーンといわれている18)

IV.アミロイドPET定量解析ソフトウェア
 センチロイドスケールを自動的に算出できるソフトウェアが数多く発表されている.センチロイドスケールを算出する際にはGlobal Alzheimer's Association Interactive Network(GAAIN, https://gaain.org/)の提唱する方法に従う必要がある.標準脳座標上で定義された関心領域を用いるため,アミロイドPET画像をStatistical Parametric Mapping(SPM, https://www.fil.ion.ucl.ac.uk/spm/)の線形変換と非線形変換を用いて標準脳に形態変換しなければならない.この変換には同時期に撮像された3次元T1強調MRI画像を用い,MRIによる変換パラメータをPETに応用することが推奨されている.SPMでは正確な形態変換のために,対象画像の信号分布と形態変換に用いるテンプレート画像の信号分布が類似している必要がある.ただし,同時期に撮像されたMRIが得られない場合には,PET/CT装置で得られる低線量CT画像や13),アミロイドPETの陰性画像と陽性画像の最適の混合率を求めて対象画像に類似したテンプレートを個々の症例で作製しPETのみでセンチロイドスケールを算出する方法も報告されている2)5).さらに,50歳以下の健常者のアミロイド陰性群の画像と統計学的に比較しZスコアマップを算出することにより,統計学上有意の集積部位を同定できるソフトウェアも開発されている15)16)図3a, b).

図3画像拡大

おわりに
 アルツハイマー病に対する抗アミロイドβ抗体薬治療におけるアミロイドPETの保険収載によりアミロイドPETが実臨床で施行される新しい時代が脳核医学領域にもたらされた.ただし,アルツハイマー病のより正確な診断のためには,タウ蛋白陽性も確認する必要がある17).また,タウ蛋白蓄積は,陽性判定だけではなく,側頭葉内側部から新皮質にタウ蛋白蓄積が進展しているかを判定するためにPETによるBraakステージ分類を行うことが望ましい7).タウ蓄積が新皮質に及ぶと認知機能低下が進むことから,抗体薬治療は側頭葉内側部にとどまっている時期に開始するのがより効果的であるとされている19).タウPET薬剤も米国では1つの薬剤が認可されており,本邦でもタウPETが実臨床で行われる日もそう遠くないと思われる.詳細は,本特集の高畑らの論文を参照されたい.

 編  注:本特集は第120回日本精神神経学会学術総会シンポジウムをもとに曾根大地(東京慈恵会医科大学精神医学講座)を代表として企画された.

 なお,本論文に関連して開示すべき利益相反はない.

文献

1) Adaniya, S., Matsuda, H., Tomori, M., et al.: Enhancing cerebral amyloid angiopathy-related inflammation diagnosis with PET using Pittsburgh Compound B. Clin Nucl Med, 49 (6); e281-283, 2024
Medline

2) Fujishima, M., Matsuda, H.: Non-standard pipeline without MRI has replicability in computation of Centiloid scale values for PiB and 18F-labeled amyloid PET tracers. Neuroimage Rep, 2 (3); 100101, 2022
Medline

3) Gonneaud, J., Arenaza-Urquijo, E. M., Mézenge, F., et al.: Increased florbetapir binding in the temporal neocortex from age 20 to 60 years. Neurology, 89 (24); 2438-2446, 2017
Medline

4) Hardy, J. A., Higgins, G. A.: Alzheimer's disease: the amyloid cascade hypothesis. Science, 256 (5054); 184-185, 1992
Medline

5) Imabayashi, E., Tamamura, N., Yamaguchi, Y., et al.: Automated semi-quantitative amyloid PET analysis technique without MR images for Alzheimer's disease. Ann Nucl Med, 36 (10); 865-875, 2022
Medline

6) Jack, C. R. Jr., Bennett, D. A., Blennow, K., et al.: A/T/N: an unbiased descriptive classification scheme for Alzheimer disease biomarkers. Neurology, 87 (5); 539-547, 2016
Medline

7) Jack, C. R. Jr., Andrews, S. J., Beach, T. G., et al.: Revised criteria for the diagnosis and staging of Alzheimer's disease. Nat Med, 30 (8); 2121-2124, 2024
Medline

8) Jagust, W. J., Mattay, V. S., Krainak, D. M., et al.: Quantitative Brain Amyloid PET. J Nucl Med, 65 (5); 670-678, 2024
Medline

9) Klunk, W. E., Price, J. C., Mathis, C. A., et al.: Amyloid deposition begins in the striatum of presenilin-1 mutation carriers from two unrelated pedigrees. J Neurosci, 27 (23); 6174-6184, 2007
Medline

10) Klunk, W. E., Koeppe, R. A., Price, J. C., et al.: The Centiloid Project: standardizing quantitative amyloid plaque estimation by PET. Alzheimers Dement, 11 (1); 1-15.e1-4, 2015
Medline

11) LaJoie, R., Ayakta, N., Seeley, W. W., et al.: Multisite study of the relationships between antemortem [11C] PIB-PET Centiloid values and postmortem measures of Alzheimer's disease neuropathology. Alzheimers Dement, 15 (2); 205-216, 2019
Medline

12) Matsuda, H., Ito, K., Ishii, K., et al.: Quantitative evaluation of 18F-Flutemetamol PET in patients with cognitive impairment and suspected Alzheimer's disease: a multicenter study. Front Neurol, 11; 578753, 2021
Medline

13) Matsuda, H., Yamao, T., Shakado, M., et al.: Amyloid PET quantification using low-dose CT-guided anatomic standardization. EJNMMI Res, 11 (1); 125, 2021
Medline

14) Matsuda, H., Okita, K., Motoi, Y., et al.: Clinical impact of amyloid PET using 18F-florbetapir in patients with cognitive impairment and suspected Alzheimer's disease: a multicenter study. Ann Nucl Med, 36 (12); 1039-1049, 2022
Medline

15) Matsuda, H., Yamao, T.: Software development for quantitative analysis of brain amyloid PET. Brain Behav, 12 (3); e2499, 2022
Medline

16) Matsuda, H., Soma, T., Okita, K., et al.: Development of software for measuring brain amyloid accumulation using 18F-florbetapir PET and calculating global Centiloid scale and regional Z-score values. Brain Behav, 13 (7); e3092, 2023
Medline

17) Matsuda, H., Yamao, T.: Tau positron emission tomography in patients with cognitive impairment and suspected Alzheimer's disease. Fukushima J Med Sci, 69 (2); 85-93, 2023
Medline

18) Pemberton, H. G., Collij, L. E., Heeman, F., et al.: Quantification of amyloid PET for future clinical use: a state-of-the-art review. Eur J Nucl Med Mol Imaging, 49 (10); 3508-3528, 2022
Medline

19) Sims, J. R., Zimmer, J. A., Evans, C. D., et al.: Donanemab in early symptomatic Alzheimer disease: The TRAILBLAZER-ALZ2 Randomized Clinical Trial. JAMA, 330 (6); 512-527, 2023
Medline

Advertisement

ページの先頭へ

Copyright © The Japanese Society of Psychiatry and Neurology