妄想の概念的規定を犠牲にしてもSchneider, K. は,妄想着想のうちにそれを妄想に含めざるを得ない何かを見ていた.この何かを明らかにするために,彼が統合失調症の妄想着想の特異性を論じる際に用いた「遊戯」という鍵概念に注目した.遊戯的な妄想着想の症例記述を引用して提示し,Janet, P. の作話論とAustin, J. L. の言語哲学を援用しつつこの精神病理を検討した.妄想着想の遊戯性は妄想的な言明に沿った行為が欠けているという言語と行為の乖離に存しており,この乖離は言語が本性上それ自体では現実との内的なつながりをもたないことによって可能となる.また,慢性統合失調症の遊戯的な妄想着想では,言明が指示することではなく,言明の意味それ自体が現実との関連なしに直接的に現実性を帯びるという背理が生じることを指摘した.
慢性統合失調症における妄想着想の遊戯性について
もみじヶ丘病院
精神神経学雑誌
127:
333-339, 2025
https://doi.org/10.57369/pnj.25-054
受付日:2024年2月14日
受理日:2024年12月19日
https://doi.org/10.57369/pnj.25-054
受付日:2024年2月14日
受理日:2024年12月19日
<索引用語:妄想着想, クルト・シュナイダー, 遊戯, 慢性統合失調症, 作話>