現在,ハームリダクションの概念は広がり,物質使用や行動嗜癖によって引き起こされる悪影響(健康被害,社会・経済的悪影響)を減らすことを目的とする取り組み全般の総称と提唱されている.厚生労働省調査にて,ゲーム障害を含むインターネット依存は421万人(2013年)と推定されている.ゲーム障害におけるハームリダクションについて,King, D. L. らはゲーム使用の強制的な制限・監視をすることは効果が限定的であるとし,社会的なつながりや,現実世界で価値を得られる活動を行うこと,節度あるゲーム使用を提唱している.手稲渓仁会病院では2017年から「インターネット・ゲーム過剰使用・引きこもり相談外来」を開設しており,ハームリダクションをベースにした予防・啓発活動の一環として,当院が行っている活動を紹介したい.一部の教育の場や家庭では,周囲が「ゲームをしない」などの高い目標を設定して,できないとゲーム機などを取り上げるといった対応が散見される.われわれはそのような「punishment model」からの脱却と意識の変化を目的として活動している.中学・高校・大学の教員・養護教諭を対象とした研修会や,保護者・生徒には健康講話の時間を使った講義を行っている.また,北海道教育委員会と協働し,啓発パンフレット作成,早期介入を目的として北海道のスクールカウンセラー研究協議会などの場でインターネット依存の児童・生徒への対応方法について研修会を実施している.そのほか,新聞や雑誌などの取材をとおして,患者や家族の声を紹介するなどの啓発活動も行っている.本稿では,それら活動の様子と実際の対応方法やかかわり方など実例を交えて紹介し,私見を述べたい.
https://doi.org/10.57369/pnj.24-053
はじめに
情報化社会が加速し,近年,インターネットの利用が急速に普及している.2022年に報告された,総務省による通信利用動向調査15)では,日本のインターネット利用人口は83.4%に及び,13~59歳の各年齢層では9割を超える状況となっている.日常生活においてもメールやゲーム,情報の取得などインターネットから多くの恩恵を受けている.その一方で,インターネットの過剰使用に関連した問題も増加傾向にあり,日常生活へのさまざまな影響を認めるようになっている.
インターネット依存症(internet addictive disorder)とは,1995年,Goldberg, I. K. らによって「日常生活に干渉や障害を及ぼすほどのインターネットへの過剰に依存した状態」と提唱18)された.嗜癖性疾患は,(i)物質関連依存(アルコール依存,薬物依存),(ii)行動依存(ギャンブル依存,パチンコ依存,買い物依存),(iii)人間関係依存(セックス依存,対人関係への依存)の大まかに3種類に分類される.英国の心理学者Griffiths, M. D. らは,インターネット依存症は行動依存に含まれる19)と示した.これらの現象は一般の人々や学者によって広く認識されているにもかかわらず,インターネットの使用目的,状況などによりヘテロな要因が重なるため,標準化された定義はなされなかった.
また,近年,単一の心理的構造としての「インターネット中毒」という用語の妥当性が批判4)されている.2013年にアメリカ精神医学会では「インターネットゲーム障害(internet gaming disorder:IGD)」の診断基準の制定が試みられた.しかし,2013年の段階では,「condition for further study」との章に分類され,エビデンス(研究成果)やデータに乏しいという理由により,正式な診断基準には至らなかった1).一方,国際疾病分類(ICD-11)では,2022年からゲーム行動症が診断名として正式に採用11)されることとなった.
ICD-11の診断要件では,「オンラインまたはオフラインの,持続的または反復的なゲーム行動のパターンによって特徴づけられ,以下によって明らかとなる.(i)ゲームのコントロール障害,(ii)ゲームが他の生活上の関心および日常活動よりも優先される程度にゲームの優先度が高まっている,(iii)ネガティブな結果が生じているにもかわらず,ゲームを続けるまたはエスカレートさせる.その行動パターンは,個人的,家庭的,社会的,学業上,職業上または他の重要な領域の生活機能に重大な支障をもたらすほどに重症である」と記載されている.
また,「診断をつけるためには,ゲーム行動およびその他の特徴が,通常,少なくとも12ヵ月以上明らかである必要があるが,すべての診断項目が満たされ,症状が重度であれば,必要な期間が短くなる可能性もある」として症状の持続期間に関する記述がある.ICD-11において診断名として正式採用されたことから,ますますこの病態に注目が集まると考えられる.一方で,2022年3月に公開されたDSM-5-TRでは,依然として「condition for further study」に分類されたまま2)であり,ICDとDSMでねじれ現象が生じている状況もあり,全世界的なコンセンサスの構築にはなお議論がある分野である.
I.インターネット過剰使用の問題点
インターネットの過剰使用は,日常生活のさまざまな場面に重大な影響を及ぼす.学生では学業面での影響が大きく,学校に登校せずに,自宅などでほとんどの時間をインターネットに費やしてしまうことにより,学業がおろそかになり成績が低下し,さらに学校へ足が向かなくなってしまう.そして,ますますインターネットの使用が過剰になるという悪循環に陥る.彼らの話を聞くと,多くは現実世界で友人関係や家庭環境,あるいは学業などに問題をかかえており,それらから逃避する手段としてインターネットの過剰使用とインターネット世界へ没入していることが多い16).インターネットの世界では,「学校に行きなさい,勉強しなさい」と注意をする人もなく,ゲーム上でスコアを上げられれば,ゲーム仲間が高く評価してくれるなど,容易に自己肯定感を満たせる.さまざまな問題をかかえてうまくいっていない現実世界の自己から逃避し,自己実現を果たせるインターネット世界の理想的な自己を生きようと,インターネットへの依存を増長させることとなる.
また,インターネットの過剰使用は生活面にも重大な影響を及ぼす.インターネットに集中するあまり,入浴しない,食事をしない,夜に眠らない,部屋を片づけないなど,生活リズムが乱れてくる.そのうえ,精神面にも重大な変化をきたす.人とつきあうのが煩わしくなって避ける,情動のコントロールがきかず怒りやすくなるなどにより,対人関係の問題が起きる.メンタルヘルス危機といえる状況となっていく.さらに成長・発達面にも重大でさまざまな影響を及ぼすと考えられる.すなわち,欠食や偏食による体調不良,運動不足による体力低下,睡眠不足や昼夜逆転,睡眠障害6)などが起こる.
インターネットで現実世界ではこれまでに体験したことのないような,楽しい経験やすばらしい生活ができるため,学生の多くがインターネットに熱中してしまう.一方,保護者はインターネットの世界で子どもが何をしているのかわからないことが多い.しかし,インターネットを長時間使用し,学校にも行かず,勉強もせずに乱れた生活を送る姿を目のあたりにし,不安や心配からインターネット過剰使用に対する注意や叱責を繰り返す.それにより,家庭環境や家族関係の悪化をまねいてしまう.内閣府の若者生活に関する調査12)において,15~39歳を対象に行われた調査では,ひきこもりは50万人と推定され,その原因の1つとしてインターネット依存が指摘17)されている.
II.インターネット過剰使用の治療
ゲーム障害の治療について,認知行動療法,認知療法,心理社会的教育,集団精神療法など,さまざまな治療介入の可能性について提起されているが,依然として治療のゴールデンスタンダードは定まっていない.Sakuma, H. らは,IGDの青少年のための日本版治療的宿泊キャンプとして9日間の「自己発見キャンプ」がゲーム時間と自己効力感に対して有効であることを実証13)したが,一般病院臨床で恒常的に実施できるかに関しては課題も多い.これにはいくつかの原因が述べられており,そもそも今まで疾患の定義があいまいであったこと,治療の最終目的が個々人により異なること,治療に関する研究が始まったばかりであることが挙げられる.それらのなかで,近年の依存症治療の流れとして「harm=害 reduction=減らす(ハームリダクション)」という概念が提唱されている.元来,薬物依存症治療から始まった概念であり,ハームリダクションインターナショナルによる定義では,「必ずしもその使用量は減ることがなくとも,その使用により生じる健康・社会・経済上の悪影響を減少させることを主たる目的とする政策・プログラムとその実践である.ある行動が原因となっている健康被害を行動変容などにより予防または軽減させること」とされている.
今日の情報化社会において,誰もが仕事でメールをやりとりし,インターネットを使って調べ物や書類などを作成している.学校の授業でもパソコンを使用しており,断ネット(インターネットを断つこと)は現実的ではない.そこで,ハームリダクションを目的として,「オンラインゲームは途中で止められず,勉強できなくなるなら,区切りのあるゲームにする」「土日はゲームをしてもいいが,平日はしないようにする」7)という提案を行う.
また,ゲーム障害におけるハームリダクションについて,King, D. L. らはゲーム使用の強制的な制限・監視をすることは効果が限定的であり,社会的なつながりや現実世界で価値を得られる活動を行うこと,節度あるゲーム使用9)を提唱している.
例えば,インターネット依存の重症例に多いとされるひきこもりの人に対しては,インターネット世界から現実社会に戻ってくる,そして現実社会で人間関係をつくる働きかけが求められる.そのためには,(i)まず,本人が問題意識をもつこと,(ii)自分が今やっていることで何を失いつつあるのか,どうしてこんなにインターネットを使用するようになってしまったのか,インターネット依存になったきっかけを見つめ直すこと,(iii)インターネットにどれくらいの時間を費やしているのかなど,自身の生活を振り返り,具体的に行動表をつくり時間の管理をすること,(iv)行動表から,学校,部活などの生活リズムを把握し,睡眠時間の不足や昼夜逆転がないかなど,客観的に自分の状況について考える,(v)現実生活のなかで支えてくれる教師,病院,支援グループなどを探す,という取り組み5)が求められよう.
III.臨床におけるハームリダクションに基づくかかわり
手稲渓仁会病院(以下,当院)は,札幌市西部に位置する地域医療支援病院(670床)である.当院精神保健科では,2017年よりインターネット・ゲーム過剰使用の相談窓口を設置し,依存症を専門とする精神科医1名,公認心理師1名の体制で,多くの中高生とその保護者を対象に診療を行っている.中高生の場合,自発的に受診することは少なく,主に保護者が主導して受診することが多い.そのようななかで,丁寧な問診,併存する精神症状の評価を行う.これは併存する精神疾患があるのであれば,薬物療法が効果的であり,治療可能な病態をしっかり治療することによって,インターネット依存の治療にもつながるためである.
また,そのような対応に加えて,ゲームにのめり込んだ背景に何があるのかを丁寧にアセスメントすることが重要である.アセスメントで最も重視しているのは,患者は,(i)ゲームそのものにのめり込み,過剰使用となって現実生活に影響を及ぼしているのか(いわゆる一次性ゲーム障害),(ii)現実生活で親子関係の不仲や経済的問題,対人関係など,さまざまな生きづらさをかかえて,それらの問題から逃避するためか,あるいは居場所としてゲームに救われているのか(二次性ゲーム障害)を判別することを意識している.ゲームやインターネットにのめり込んだ背景や経緯を中心に患者や保護者から聞き取っていくことが大切となる.当院を受診する患者の多くは(ii)に該当し,現実生活での生きづらさからゲームやインターネットにのめり込んでいることがほとんどであり,精神疾患をかかえている者は少ない.そのため,受診に際して,保護者には必ず同伴を依頼し,保護者と子どもの関係性に着目して診察を行っている.保護者の多くは子どものインターネット過剰使用への困り感から,使用制限や罰を用いた対応をとっている.しかし,スマートフォンの利用を制限することや,インターネットを取り上げ,約束違反を責めているだけではインターネット依存の解決にはならないことを説明する必要がある.
当院では,精神科医による診察と並行して,公認心理師が保護者に対して,子どもにどのようにかかわっていったらよいのかをアドバイスしている.初診時,たいていの保護者は子どもに対して批判的な態度をとっている.その背景には,保護者自身のかかえる悩みが親子の摩擦に影響している場合も少なくない.そのため,公認心理師によるカウンセリングでは,子育ての悩みだけではなく,保護者自身がかかえる不安や悩みにも寄り添いながら,親子関係の改善と再構築をめざしてかかわることが大切であると考えている.
なぜなら,保護者に子どもの悩みや傷つきに寄り添える心の余裕が生まれると,子どもは保護者から安心感を得て,自分の悩みや課題に挑戦する意欲を高められるようになる.さらには,実際の行動をとおして,自らの力で課題を乗り越え自信を深めていく.あるいは,一度に乗り越えられなかったとしても,保護者から安心感を得て再び課題に挑戦していく.この過程が子どもの自己肯定感とともに,保護者の子育てへの自信も高め,親子の愛着関係の再構築を促すと考えている.
当院の公認心理師はスクールカウンセラーも兼務しているが,教育現場では,不登校のため子ども本人が学校に来ることができず,対面でのカウンセリングができない場合もある.しかし,そのような場合でも保護者への助言から始め,親子関係を改善することは,インターネット依存に対する支援として有効であると考えている.
このように,診察をとおして,保護者にはこれまでのかかわり方を見直してもらい,そのうえで,子どもがなぜインターネットにのめり込んでいるのかを考えてもらうように心がけている.インターネット依存の診察では,子どもだけの問題とせず,保護者にも一緒に考えてもらうことを重視14)している.つまり,インターネット依存を本人だけの問題として,子どもに解決を任せきりにするのではなく,保護者も治療者も一緒に考えながらサポートし,見つかった課題を共有していく姿勢が必要となる.さらには,子どもが現実の学校や社会生活において,自己評価の低下など,苦しい環境や状況におかれていることに理解を示しつつも,これら現実問題から逃げないように,またインターネット世界へ逃避しないように支援していくことが重要である.その人にとっての治療のゴールは何か,それぞれ自分のゴールを考えさせて,それらに向かって一緒に進んでいく.その過程において,自分もやればできるという自己達成感を高め,自己評価を上げていくために,取り組みに対する前向きな評価や支援が必要である.自己評価が上がると自信が生まれ,これまで避けてきた現実社会での物事にも一生懸命に頑張ろうという姿勢をみせるようになる.現実社会での成功体験や新しい人間関係の構築ができてくると,しだいにインターネット世界から距離をおき,現実社会へ戻っていくことが多い.
IV.教育現場での予防啓発活動
昨今,教育機関においてゲームやインターネット依存は大きな関心を集めている.教育機関からの相談も増加しており,多くはその困り感から医療機関での治療や薬物療法がないかなど,問題を外部に委ねて解決してもらいたい,という希望が聞かれることが少なくない.その困り感の背景には,学校で行われている予防教育も影響していると思われる.
文部科学省では,学校における薬物乱用防止教育の充実として,「第五次薬物乱用防止五か年戦略(2018年8月3日,薬物乱用対策推進会議決定)」において,「薬物乱用防止教室は,学校保健計画において位置付け,すべての中学校及び高等学校において年1回は開催するとともに,地域の実情に応じて小学校においても開催に努める」としている.薬物乱用防止教室では,薬物乱用問題に関する意識を高めるとともに,「ダメ.ゼッタイ.」普及運動として薬物使用を「ゼッタイ.」に防ぎ,乱用を予防する目的で教育が行われている.そのため教育現場では,そもそも依存を形成するものを使用させないことで,依存症を予防するという指導が中心となっている.それはゲームやインターネットについても同様であり,ゲームやインターネットを悪として,いかに健康や社会的悪影響があるかが強調され,過剰使用により怠学や不登校といった学校生活上の問題につながるとみなしている.
それらを予防するためには,ゲームやインターネット使用時間の規制や管理を強め,子どもに守らせようとする指導が多くみられる.これらを守れない場合は「没収」といった学校罰が用いられ,Baldwin, J. のいう「苦痛を通して」学ばせる3)ことで予防しようとするものである.しかしながら,先にも述べたように,今日の情報社会では,全くインターネットを使用させないようにする,約束を守れなければ罰する8)といった「punishment model」を用いた対策で,子どもたちのゲームやインターネット依存を予防することが難しいことは明らかである.そのため当院では,より現実的な介入方法として「断ネット」ではなく,ハームリダクションを目的として指導するよう教育機関への啓発活動を行っている.学校生活上の問題をゲームやインターネットの過剰使用だけに求め,やめさせることだけに焦点をあてて管理を強めることは,子どもとの関係を悪化させ,より一層依存を強めることになると伝えている.
そのことをふまえ,教育機関への啓発活動として,北海道教育委員会と協働し,保護者や児童生徒向けのインターネット依存に関するリーフレットの作成や,養護教諭や教職員を対象に講演を行っている.また,学校内で保護者,生徒に向けた講演や,インターネット過剰使用についての理解と対応について啓発を行っている.教育機関での講演のなかで特に教職員に強調していることは,児童生徒がゲームやインターネット過剰使用に陥った背景である学校生活,家庭生活などでの悩みに寄り添い,現実生活の充実をめざして支援することを試みてほしいと伝えている.医療機関での治療以前に教育,あるいは療育の場でできることが多くあることを,丁寧に説明することを心がけている.また本稿は実践の報告であり,今後このようなアプローチについての有効性を評価することも今度の課題である.
V.COVID-19による影響
2020年頃からの新型コロナウイルス感染拡大により当院外来では受診相談が増多した.相談内容の多くは,休校などにより自宅で過ごす時間が長くなり,子どものゲーム,インターネットの使用時間が増加してゲーム障害を保護者が心配しているというものであった.新型コロナウイルス感染拡大前には見えなかった,あるいは見ないようにしていた親子関係の問題が,両親の在宅勤務などにより,直面化せざるをえない状況となったケースも散見された.家族が一緒にいる時間が多くなり,家庭内の過密化を引き起こしたために家族内葛藤10)が促進され,平時以上に家族問題が浮き彫りになったケースも少なくない.浮き彫りとなった家族問題からの逃避のため,さらに子どもがゲームにのめり込み受診に至ったケースも認めた.
前述した一次性ゲーム障害,二次性ゲーム障害の観点から考えると,新型コロナウイルス感染拡大による影響があったとはいえ,背景にかかえた家族問題や生きづらさからゲーム障害に至っているという問題の本質に変わりはない.治療においても患者の生きづらさへ丁寧にかかわっていくことが大切であることは言うまでもない.
一方で感染拡大による新たな変化もみられた.学校で積極的にリモート授業が行われるようになり,不登校の子どもたちも自宅にいながら単位取得が可能となった.平時であれば難しいと考えられた進級が多くのケースで可能となった.ポスト新型コロナウイルスを見据えた社会のあり方が構築されていくなかで,リモートのようなデジタルデバイスを用いた授業形式は利便性も高く,社会システムの1つとして継続していくことも有用かと考えた.
おわりに
ゲーム障害が正式な診断名となり,今後も相談や治療依頼がますます増加することが予想される.一般精神科医,小児精神科医,小児科医など,多くの場面で受診依頼の増加が想定されるなかで,専門的な治療方法やかかわりを求め,その対応に苦慮するケースも散見される.しかしながら,ハームリダクションアプローチを用いた患者へのかかわりは,特別な手法をもちいることではなく,子どもと保護者に寄り添って丁寧にかかわるという点において精神科医療の基本と同じである.
編 注:本特集は第118回日本精神神経学会学術総会シンポジウムをもとに宮田久嗣(医療法人光生会平川病院)を代表として企画された.
なお,本稿の要旨は,2021年度アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会・第56回日本アルコール・アディクション医学会(2021年12月17日,三重県津市)において同一のテーマのシンポジウムにて発表した.
なお,本論文に関連して開示すべき利益相反はない.
1) American Psychiatric Association: Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed (DSM-5). American Psychiatric Publishing, Arlington, 2013 (日本精神神経学会 日本語版用語監修, 髙橋三郎, 大野 裕監訳: DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル. 医学書院, 東京, 2014)
2) American Psychiatric Association: Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed, Text Revision (DSM-5-TR). American Psychiatric Publishing, Washington. D. C., 2022 (日本精神神経学会 日本語版用語監修, 髙橋三郎, 大野 裕監訳: DSM-5-TR精神疾患の診断・統計マニュアル. 医学書院, 東京, 2023)
3) Baldwin, J.: The Art of School Management: A Text-Book for Normal Schools and Normal Institutes, and a Reference Book for Teachers, School Offices and Parents. Warwick, Toronto, 1886
4) Griffiths, M. D.: Conceptual issues concerning internet addiction and internet gaming disorder: further critique on Ryding and Kaye (2017). Int J Ment Health Addict, 16 (1); 233-239, 2018![]()
5) 樋口 進監: 心と体を蝕む「ネット依存」から子どもたちをどう守るのか. ミネルヴァ書房, 京都, 2017
6) 樋口 進: スマホゲーム依存症. 内外出版社, 東京, 2018
7) 樋口 進: ゲーム・スマホ依存から子どもを守る本. 法研, 東京, 2020
8) 河合 務: 生徒指導の源流における軍隊モデルと治療モデル―J. ボールドウィンの教育思想―. 地域学論集: 鳥取大学地域学部紀要, 18 (2); 1-7, 2021
9) KingD. L., DelfabbroP.: ゲーム障害―ゲーム依存の理解と治療・予防― (樋口 進編). 福村出版, 東京, 2020
10) 松本俊彦: COVID-19と社会的孤立, 依存症の臨床を中心に. 日本社会精神医学会雑誌, 30 (2); 167-173, 2021
11) Meyers, M: 'Gaming disorder' deemed an official illness by World Health Organization. CNET, 26 May 2019. (https://www.cnet.com/tech/gaming/world-health-organization-deems-gaming-disorder-an-official-illness/) (参照2024-02-20)
13) Sakuma, H., Mihara, S., Nakayama, H., et al.: Treatment with the Self-Discovery Camp (SDiC) improves internet gaming disorder. Addict Behav, 64; 357-362, 2017![]()
14) 白坂知彦, 常田深雪, 木村永一: ゲーム障害. 精神科Resident, 2 (2); 88-89, 2021
15) 総務省: 令和3年通信利用動向調査の結果. 2022 (https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/220527_1.pdf) (参照2024-02-20)
16) Sugaya, N., Shirasaka, T., Takahashi, K., et al.: Bio-psychosocial factors of children and adolescents with internet gaming disorder: a systematic review. Biopsychosoc Med, 13; 3, 2019![]()
17) Tateno, M., Teo, A. R., Ukai, W., et al.: Internet addiction, smartphone addiction, and hikikomori trait in Japanese young adult: social isolation and social network. Front Psychiatry, 10; 455, 2019![]()
18) Wallis, D.: Just Click No. New Yorker, 13 January, p.28, 1997
19) Widyanto, L., Griffiths, M.: Internet Addiction: Does It Really Exist? (Revisited). Psychology and the Internet, 2nd ed (ed by Gackenbach, J.). Academic Press, New York, p.141-163, 2007





