Advertisement第121回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第126巻第11号

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特集 次世代の精神医学研究のあり方―知の統合による課題解決に向けて―
医療AIが可能にする次世代の精神医療―AIがひらく次世代の精神医療―
荒牧 英治, 工藤 紀子
奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科
精神神経学雑誌 126: 731-736, 2024
https://doi.org/10.57369/pnj.24-118

 今,医療が変わりつつある.電子カルテに集積される医療ビッグデータ,それを用いた人工知能による診断支援,さらには,スマートフォンやスマートスピーカといった新たなデバイスからの時系列情報など,さまざまな材料,技術が登場しており,膨大な情報が利用可能になりつつある.特に,大規模言語モデル,いわゆるAIが,これまで扱いが困難であった自然言語をある程度処理できるようになったことのインパクトは大きく,対話インタフェースを用いた多くのアプリケーションが開発されつつある.この結果,医療者のみならず,患者側も主体的にAI技術を使い始め,医療に関する情報収集,カウンセリング,行動変容など医療とそれを取り巻く周辺で利用されつつある.この流れはもう止められるものではなく,今後さらに多くの患者がAIを利用するのは間違いないであろう.楽観的には,AIが患者と医療者の両方をサポートし,連携を深めることで,患者に寄り添った緻密な医療が実現する可能性もある.しかし,AIがブラックボックスで原理についてまだ不明な点が多いこと,機械の説明責任,医療の信頼,診断の公平性,データの所有権など,多くの問題がまだ十分に議論されないままであり,AIが予想もしない問題を引き起こしてしまう可能性も危惧される.本稿では,医療AIの現況を俯瞰し,次世代の精神医療に起こり得るかもしれない問題について議論する.

索引用語:医療AI, 自然言語処理, チャットボット, 生成AI, 大規模言語モデル>
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