Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第125巻第4号

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症例報告
原因不明の嘔気症状と顕著な体重減少が先行したレビー小体型認知症の1例
辻 悠里, 尾崎 紀夫, 藤城 弘樹, 木村 大樹
名古屋大学医学部附属病院精神科
精神神経学雑誌 125: 275-282, 2023
https://doi.org/10.57369/pnj.23-040
受理日:2022年12月4日

 レビー小体型認知症(DLB)は,中枢のみならず末梢神経系にレビー病理が認められ,認知機能障害などの精神神経症状に加えて,多彩な身体愁訴をしばしば呈する.最近,消化管の末梢神経においてレビー病理が比較的早期に出現し,特に食道病変が全身のレビー病理の広がりや自律神経障害と相関することから,予後予測マーカーの候補として示され,DLBの初期症状としての消化器症状が注目されている.今回,われわれは,DLB診断に先行した嘔気が,初期症状と考えられた1例を経験した.症例は60歳代の女性.X-2年より嘔気が出現し,身体的精査を繰り返し施行したが原因は判明せず,当初,身体症状症と診断された.経口摂取不良が持続し,body mass index(BMI)13台と極度の低体重状態となったため,X年8月に総合病院精神科に入院となった.精査の結果,嘔気の原因は判明しなかったが,認知機能低下とともに,錐体外路症状や嗅覚低下,両側線条体のドパミントランスポーター集積低下,MIBG心筋シンチグラフィ検査での早期像および後期像の取り込み低下を認め,probable DLBの診断に至った.本症例から,高齢者の原因不明の消化器症状には,背景となるDLBの鑑別に留意する必要があると考えられ,文献的考察を加えて報告する.

索引用語:レビー小体型認知症, 認知症, 嘔気>
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