Advertisement第120回日本精神神経学会学術総会

論文抄録

第124巻第8号

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特集 精神医学と漢方医学のクロストーク―古典から繙く知恵,現代における漢方の役割,未来に向けた課題と展望―
精神科臨床における漢方医学的アプローチの有用性
井口 博登
神経科浜松病院
精神神経学雑誌 124: 546-554, 2022

 漢方エキス製剤が開発されて以降,漢方薬は,漢方医学に馴染みのない医師にとっても,非常に身近な存在になった.さらに,大建中湯をはじめとした少数の薬剤はEBMの俎上においても有効性が証明されるようになったこともあり,2011年の日本漢方生薬製剤協会の処方調査によると,一般臨床医の約9割が,調査時点で漢方薬を処方しているという.しかし,術後イレウスの予防に大建中湯,認知症のBPSDに抑肝散,機能性ディスペプシアに六君子湯など,西洋医学的な病態理解の枠内で,漢方薬を,他の薬剤と同じような感覚で選んで処方する方法は「病名漢方」と呼ばれ,漢方医学の内部からは,本来の漢方医学的な診察,診断,いわゆる「証」に基づく処方をしていないということで,批判的にみられる場合がある.だが,逆に,エキス製剤と病名漢方によって,これまでになく広げられた漢方医学の間口から,さらに奥に入って,陰陽虚実,寒熱,表裏や気血水,五臓などの漢方医学的な病態理解に基づいた評価をしてゆくことによって,非常に多彩な漢方薬を駆使しつつ,患者の症状に向き合ってゆくという道も,日本には用意されているのである.本稿では,漢方医学的な病態理解と治療の枠組みについて,まず簡略に説明したうえで,うつ病エピソード2症例を提示し,併発してきた,喘息,頭痛,下痢に対して漢方医学的アプローチが奏効した経過を示し,その有用性について考察した.

索引用語:漢方医学, 精神医学, 柴朴湯, 桂枝人参湯, 五苓散>
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